長下肢装具と動画デバイスを併用した歩行練習が基本動作能力の改善に寄与した症例

DOI
  • 中瀬 智子
    独立行政法人自動車事故対策機構 岡山療護センター

抄録

<p>【はじめに】今回,交通事故による頭部外傷により遷延性意識障害と筋緊張低下を呈し,基本動作に全介助を要した症例に長下肢装具を用いた歩行練習を行った.これにより,起居動作と端坐位保持能力の改善を認めた症例を経験したので報告する.</p><p>【方法】症例紹介:10代後半,男性,家族と5人暮らし,受傷前ADL自立.診断名:びまん性軸索損傷,両側前頭葉脳挫傷.現病歴:乗用車の後部座席に乗車中,正面衝突により受傷,救急搬送され入院,回復期病院を経て当院入院となる.</p><p>介入初期,意識レベルE4V1M3,MAS全般的に0~1と筋緊張低下を認めるが,足関節は2と足クローヌスを認めた.起きあがりは伸展パターンが出現し,端坐位保持は立ち直り反応を認めず頸部保持困難で姿勢保持に全介助を要した.立ち上がりは長下肢装具の使用に関わらず全介助を要し,声掛けによる頭部挙上は困難なため動画視聴による刺激入力を行い立位訓練を実施した.足関節背屈角度に制限が認められたためヒール付き長下肢装具を使用していたが背屈角度が0度に改善したためヒールを除去し背屈角度を5度に設定し歩行練習開始、その後背屈角度を8度に変更し歩行練習を継続した.</p><p>【結果】介入後意識レベルはE4V1M4と改善を認め,筋緊張は介入初期と著変なく推移した.起き上がりでは頸部の立ち直り反応が認められるようになりon handからon elbowは動作介助に対する協力が得られるようになった.端坐位保持は軽介助となり動画視聴による刺激入力を行うと自力での頸部保持が10分可能となった.長下肢装具による歩行では前方より動画視聴による刺激入力を行うと頸部保持での歩行が可能,また重心移動の介助を行えば自力で右下肢の振り出しがみられるようになった.</p><p>【考察】脳卒中ガイドライン2015によると,脳卒中に対し早期から装具を使用した歩行練習が推奨されており有効性が認められている.本症例は頭部外傷であるが長下肢装具を使用した歩行練習により覚醒状態の改善と歩行能力の改善を目指した.介入当初足関節背屈角度には制限が認められヒール付き長下肢装具を使用した立位練習を行いながら足関節可動域改善目的にてウルトラフレックス足継手の短下肢装具を使用した.歩行練習当初背屈角度5度に設定したが歩行介助量軽減と歩行距離が一番伸びるようにその後8度に設定し歩行練習を継続した.抗重力伸展位と股関節の伸展を伴う歩行は歩行能力の改善が期待できるだけでなく,覚醒状態の改善も期待ができる.今回は股関節と体幹の抗重力保持だけでなく,頸部の保持も確保したうえで歩行距離を伸ばせたことが覚醒状態と基本動作能力の改善に寄与したと考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本報告はヘルシンキ宣言に基づき,本人同席のもと家族に口頭にて説明,書面にて同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), B-39_2-B-39_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134461952
  • NII論文ID
    130007692514
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.b-39_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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