パーキンソン病に出現する嚥下障害の予防

DOI
  • 内田 学
    東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 山口 育子
    東京医療学院大学保健医療学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 月岡 鈴奈
    石神井台特別養護老人ホーム秋月

書誌事項

タイトル別名
  • ‐プラセボを用いた超音波療法の効果検証‐

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>パーキンソン病(Parkinson disease:以下PD)は中脳黒質のドパミン作動性有色素神経細胞が脱落し,線条体でのドパミン消失によって安静時振戦・筋固縮・無動・姿勢反射障害等の症状が現れる.PD患者の嚥下障害は予後に関係する重要な因子であり,経過中90〜100%に出現し死因の25%は肺炎で,肺炎の発症のリスク因子として誤嚥は重要である.PD患者の嚥下障害に対する治療法としては薬物療法が選択され,L-dopaなどが代表的に用いられている.治療効果として口腔期の異常は改善させるが食物移送に関与する咽頭期の異常に対して効果が不十分である.間接的介入として摂食・嚥下リハビリテーションが併用されているが代表的な治療法はShaker exerciseである.この介入効果は舌骨上筋に対する筋力増強が目的であり主として顎二腹筋などの筋萎縮に対して実施される.PD患者の嚥下障害はドパミン欠乏による咽頭や喉頭筋群の固縮によって咀嚼や嚥下,喉頭蓋の閉鎖不全が起こるにも関わらず嚥下筋の筋力を焦点にした介入が実施されている.我々は,第27回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会にて舌骨下筋に対する超音波療法(Ultra sound:以下US)が嚥下クリアランスを改善させることを報告した.その検討は温熱効果の介入効果のみであることから,プラセボ群との対比を用いることでUSの効果を明確にすることを本研究の目的とした.</p><p>【方法】</p><p>対象は, PDと診断され日常的に嚥下障害を呈している者19名とした.Head dropping testが陽性を示し頸部筋の固縮を認め嚥下障害の指標となる相対的喉頭位置が49%以上であることを統制条件とした.乱数表を用いてUS介入群10名、プラセボ群9名をそれぞれ割り付けた。US介入群は甲状舌骨筋を対象筋としてUSを実施した.出力周波数は3MHZ,照射時間率は,照射時間/(照射時間+休止時間)で設定し50%,BNRは3.5±30%,治療頻度は3回/週×2セット(合計6回)とし10分間実施した.プラセボ群はUSの出力をOFFにした状態で同一筋に対して同条件下の時間頻度で回転法を実施した.測定項目としては,嚥下機能を評価するために改訂水飲みテスト(modified water swallow test : 以下MWST),相対的喉頭位置,嚥下時における嚥下関連筋の表面筋電図(振幅,活動時間),食事摂取時に出現する顕性誤嚥の回数を測定した.両群共に全ての測定を介入前に実施し,2週間の介入後に再測定を実施した.統計的手法としては,群内におけるMWST,相対的喉頭位置,筋電図学的解析,顕性誤嚥回数の介入前後の差についてMann-Whitney's U testを実施した.</p><p>【結果】</p><p>US群では,MWST,嚥下筋活動の振幅,活動時間,相対的喉頭位置,誤嚥回数が介入後に有意な改善を認めた.一方でプラセボ群では全ての項目に統計学的な差は認めなかった。</p><p>【結論】</p><p>PDの誤嚥に対するUSは,固縮による異常な筋緊張を抑制し咽頭部における活動性をより改善させた.プラセボ群では変化を認めないことから,舌骨下筋に対するUSは誤嚥の予防効果として有効であることが示された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は東京医療学院大学研究倫理委員会の承認(17‐37H)を得たのちに実施した.すべての対象者には視覚材料を用いて研究内容を十分に説明し,書面にて同意を得た後に測定および介入を実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-107_1-C-107_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134467456
  • NII論文ID
    130007692689
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-107_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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