受動的歩行様運動による脳卒中患者の下肢筋活動の検討

DOI
  • 後藤 悠太
    西大和リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 生野 公貴
    西大和リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 藤井 慎太郎
    西大和リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 西 祐樹
    西大和リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 赤尾 静香
    西大和リハビリテーション病院 リハビリテーション部
  • 河島 則天
    国立障害者リハビリテーション研究所 運動機能系障害研究部 神経筋機能障害研究室

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>脳卒中患者は脊髄神経回路の直接的損傷を受けていないため,運動感覚麻痺がある場合でも,左右下肢の交互運動と周期的な荷重印加等が実現できれば,脊髄中枢パターン発生器による歩行運動出力の発現が可能である.今回,簡便に立位歩行運動が可能な装置を用いて,脳卒中症例に対して受動的歩行様運動(受動歩行)実施中の下肢筋活動の特徴を調査し,自律的な神経制御の賦活に着目した介入の応用可能性を検討することとした.</p><p>【方法】</p><p>初発脳卒中患者16名(年齢66.15±10.44歳,発症経過82.7±30.7日)を対象とし,参加基準は一側の運動麻痺を呈する症例で指示理解良好な症例とした.課題には膝・股関節・体幹の3点固定にて全荷重での受動立位と歩行様交互下肢屈伸運動が可能な装置(EasyStand Glider 6000,Altimate Medical社)を使用した.被験者にはできる限りリラックスさせた立位をとらせ,検者が1歩行周期1秒のリズムで10分間装置を駆動させた.麻痺側足関節底屈MVC時,受動立位時の最大値,受動歩行時の両側ヒラメ筋および前脛骨筋の表面筋電図(EMG)を測定し,20~500Hzのバンドパスフィルターで処理した後,二乗平均平方根を算出し,最大M波振幅または最大随意収縮(MVC)で正規化した.受動歩行中のEMGの特徴を確認するため4歩行周期を10回分加算平均し,麻痺側ヒラメ筋EMGの自己相関係数,麻痺側ヒラメ-前脛骨筋と両側ヒラメ筋同士の交互相関係数を算出した.また,運動麻痺との相関関係について,底屈MVCトルクと受動歩行時の筋活動をスピアマンの順位相関係数を用いて分析した.</p><p>【結果】</p><p>麻痺側ヒラメ筋および前脛骨筋の受動歩行時の筋活動は,受動立位時よりも有意に大きかった(p<0.01).16名中5名は最大足関節底屈時(2.28%±1.72%)よりも受動歩行時(5.26±3.09%)の麻痺側ヒラメ筋のEMG振幅が大きく,底屈MVCトルクと受動歩行中の麻痺側ヒラメ筋%MVCには中等度の負の相関を示した(ρ=-0.59, p<0.05).受動歩行時EMGにおいて,麻痺側ヒラメ筋および前脛骨筋の最も高い自己相関係数の平均は各々0.62±0.14,0.48±0.20であり,ピーク間隔は平均959±25ms,941±47msであった.両ヒラメ筋の相互相関係数は平均0.70±0.20,麻痺側ヒラメ筋-前脛骨筋の相互相間係数は平均0.56±0.18であった.</p><p>【考察】</p><p>受動立位に比して受動歩行中に大きな筋活動を認め,全症例で交互的かつ周期的な筋活動が確認できたことは,本装置による下肢交互運動や荷重印加によって脊髄歩行中枢の活動が生じたものと考えられる.また,足関節底屈筋の随意運動が生じない症例ほど受動歩行時により大きい筋活動が得られたことから,重度麻痺例で問題となる発症早期または生活期での二次的な筋萎縮の予防と過剰な随意努力が少ない反射的筋活動に基づく歩行の促通に活用できることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の趣旨の説明を行い,自署による同意を得た後に実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-206_1-E-206_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134506880
  • NII論文ID
    130007693047
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-206_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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