歩行補助装置「RE-Gait®」が片麻痺患者の歩行改善に及ぼす影響

DOI
  • 中川 慧
    広島大学大学院 医歯薬保健学研究科
  • 東 啓太
    因島医師会病院 リハビリテーション科
  • 友井 雅浩
    広島大学大学院 医歯薬保健学研究科
  • 諏訪 翔真
    広島大学大学院 医歯薬保健学研究科
  • 柚木 啓輔
    広島大学大学院 医歯薬保健学研究科
  • 猪村 剛史
    広島大学大学院 医歯薬保健学研究科
  • 黒瀬 智之
    広島大学大学院 医歯薬保健学研究科
  • 荒牧 恭平
    因島医師会病院 リハビリテーション科
  • 村上 光裕
    因島医師会病院 リハビリテーション科
  • 河原 裕美
    株式会社 スペース・バイオ・ラボラトリーズ
  • 田中 英一郎
    早稲田大学理工学術院 大学院情報生産システム研究科
  • 弓削 類
    広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 株式会社 スペース・バイオ・ラボラトリーズ

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>歩行障害へのリハビリテーションとして,ロボット使用での歩行練習が注目されている.歩行補助装置RE-Gait®(株式会社 スペース・バイオ・ラボラトリーズ社製)は,足関節補助に特化した短下肢装具型の装置であり,感圧センサによって歩行位相を把握することで,各々の歩行動作に合わせて足関節の底背屈角度やタイミングを調整する機構を有している.本研究では,慢性期片麻痺患者に対し,本装置を1か月間使用した前後での歩容改善効果を検討すること,そしてその改善メカニズム検討することを目的とした. </p><p>【方法】</p><p>監視レベルで歩行可能であるが,異常歩行を呈する慢性期片麻痺患者14名(罹患期間:1-22年)を対象とした.対象者を無作為にRE-Gaitを使用した歩行練習を1日20分,週2回程度1か月間実施する群(以下,介入群),RE-Gaitは使用せず,20分間平地歩行トレーニングを行うコントロール群の2群に分類した.評価指標は,10m歩行による歩行速度ならびに歩幅,足圧の経時的変化,足関節背屈角度の経時的変化とした.さらに,改善のみられた対象者数名に対し,歩行改善のメカニズムを検討するために,RE-Gait使用前後での脊髄相反性Ia抑制ならびに体性感覚誘発電位を評価した.相反抑制評価は,脛骨神経刺激の直前(1-4ms前)に腓骨神経を刺激することで,ヒラメ筋から記録されるH反射の抑制の割合を評価した.体性感覚誘発電位は,脛骨神経へ2連発電気刺激を与え,頭皮上脳波電極から連発刺激による皮質応答の抑制の程度を評価した.本研究におけるRE-Gaitパラメータの設定では,前遊脚期での足関節背屈ならびに遊脚中期での足関節背屈を促すプログラムに設定した.</p><p>【結果】</p><p>介入群では,1か月の歩行練習により,歩行速度が増加し,顕著な外転歩行が軽減する等,歩容が大きく改善する対象者が多くみられた.神経生理学的検査の結果では,介入前は相反抑制が認められなかったが,介入直後には,1-2msの先行刺激の付加で顕著な抑制が認められた.また,体性感覚誘発電位は,介入直後に連発刺激による抑制が減少する結果となった.</p><p>【考察】</p><p>本研究では,慢性期片麻痺患者にRE-Gaitを1か月間継続使用することで多くの対象者で歩行速度の増加,歩容の改善が観察された.すなわち異常歩行が残存している場合でも,RE-Gaitを使用して歩行練習を反復することで,歩行動作の再学習につながり,歩容が改善する可能性が示された.また神経生理学的評価により,RE-Gait使用直後には,ヒラメ筋への抑制が脊髄および大脳皮質レベルで改善が認められた.この結果は,RE-Gaitで足関節の底背屈を適切に補助することにより,下肢筋緊張をコントロールできる可能性を示しており,今後はさらなるメカニズムの解明ならびにRE-Gaitの適応に関しての検討が望まれる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,広島大学病院総合医療研究推進センター倫理委員会の承認を得て行った.計測に先立ち,被験者に課題内容を十分に説明し,書面にて同意を得て実施した.演者の河原,弓削はRE-Gaitの販売元である(株)スペース・バイオ・ラボラトリーズの取締役を兼務しているが,本研究の実施,データ入力,データ処理,解析などには直接関与していない,</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-60_1-E-60_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134512768
  • NII論文ID
    130007693187
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-60_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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