患者の希望と家族の不安に寄り添い、自宅へ退院支援をした一症例

DOI
  • 錦織 延洋
    医療法人 篠原湘南クリニック クローバーホスピタル

抄録

<p>【はじめに】</p><p>地域包括ケア病棟は地域包括ケアシステムの中で、在宅復帰に向けた医療ケアとリハビリ等を中心にした在宅復帰支援を行うことが目的とされている。今回、医療依存度の高い症例の在宅復帰支援に関わることができたため、本症例の退院支援における他職種連携と理学療法の役割について報告する。</p><p>【方法】</p><p>対象は80歳代の男性、身長168.0㎝、体重60.0㎏、BMI21.3、ブリンクマン指数800。胃癌術後、誤嚥性肺炎になり人工呼吸器管理を繰り返し臥床傾向となっていた。腸瘻の増設後、術後約3ケ月で当院へ転院。本人HOPEは「食べてしゃべれるようになって帰りたい。」入院時の状況は、酸素化はトラキオマスク3L送気、コミュニケーションは発話筆談で聴覚理解は良好。歩行は車いすを押しながら連続50m可能、入院時のFIM91点(運動60点、認知31点)。</p><p>理学療法(以下、PT)介入は週5回、1日あたり40~60分間で、2ヶ月間実施。PTプログラムは呼吸リハビリテーション、座位や立位での上下肢筋力強化練習、歩行練習を実施した。</p><p>最終的に経口摂取を断念し腸瘻での経管栄養で、自宅退院を目指すことになった。退院時の状況はトラキフォン(人工鼻)2L送気、コミュニケーションは発話可能。フリーハンド歩行(見守りレベル)で10m程度可能、退院時のFIM110点(運動79点、認知31点)</p><p>【結果】</p><p>退院支援は退院支援看護師(以下、退院支援Ns)による医療的な管理(経管栄養と気管吸引)の指導、医療ソージャルワーカーによるサービス調整などのサポートを実施。PTは退院時指導として自宅へ訪問し、環境調整と生活指導を中心に実施。実際の生活環境での動作確認や、ケアマネジャー・訪問看護師と情報交換も行い退院後の生活について情報を共有することができた。最終的に自宅退院ができたことにご本人は満足されていた。妻は、開始当初は医療的な管理の難しさに不安の訴えが多く聞かれていたが、練習を繰り返すことで徐々に自信がつき、退院日まで継続して練習が行えることに安心した様子も見られた。結果として家族の気持ちに配慮し、ご本人の希望に沿って自宅へ退院することができた。</p><p>【結論】</p><p>ブリンクマン指数高値で元々肺に気腫性病変があった可能性が高く、胃癌術後の呼吸器合併症リスクの高い患者であった。加えて前医から臥床傾向の生活で、経管栄養後に胃内容物の逆流リスクの高い生活となっていた。理学療法介入では身体状況および栄養状態に合わせた対応が必要となった。退院直前にも誤嚥性肺炎を発症し、入院時より全身状態は悪化、経管栄養と気管吸引が必要となり医療依存度は高くなった。ご家族の不安に寄り添いながら他職種で退院支援を続け、退院後の生活を少しずつイメージできるようになっていった。また、退院後も主治医による訪問診療の調整ができたため、入院中から退院後まで継続的なフォローが可能になり、ご本人・ご家族ともに安心感のある退院支援を提供することができた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者とご家族に本研究の目的と内容を説明し、個人情報保護を目的とした法人既定の書面に署名をいただいた。また個人情報の保護には十分に配慮することを説明した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), G-65_2-G-65_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134538880
  • NII論文ID
    130007693483
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.g-65_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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