骨格筋における非活動性侵害受容器と交感神経の電気生理学的特徴

DOI
  • 太田 大樹
    帝京大学 医療技術学部 柔道整復学科
  • 松原 崇紀
    名古屋大学大学院 医学系研究科 神経性調節学分野
  • 堀田 晴美
    東京都健康長寿医療センター研究所 自律神経機能研究室
  • 水村 和枝
    日本大学 歯学部 生理学講座
  • 田口 徹
    新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科

抄録

<p>【目的】非活動性侵害受容器(MIA)は正常時では機械非感受性であるが、病態時に活性化し痛覚過敏の末梢神経機構に寄与すると考えられている。MIAはこれまでに関節、皮膚、角膜、膀胱、直腸・結腸で確認されているが、骨格筋では実証されておらず、その活性化因子や機構も未解明である。また、骨格筋の交感神経は運動時の血流反応に重要な役割を果たすと考えられるが、その割合や詳細な電気生理学的特性は未解明である。そこで本研究では、骨格筋のMIAや交感神経を同定し、それらの電気生理学的特徴を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】雄性SDラットを用い、ペントバルビタール麻酔下で血圧、心拍、直腸温を生理的範囲に保持し、in vivo単一神経記録法により腓腹筋神経からC線維を同定した。次に、同定したC線維軸索への反復電気刺激(5 Hz、10秒間)により活動依存的伝導速度変化(ADCCV)を記録した。また、腓腹筋へのピンチ刺激により線維の機械感受性の有無を調べた。さらに、MIAと考えられた一部の線維に対して炎症メディエータの混合物(炎症スープ)を筋注し、新たに機械感受性を獲得するか調べた。また、腓腹筋支配神経のうち交感神経の割合や軸索伝導特性を調べるため、腰部交感神経幹を遠心性に電気刺激し、腓腹筋神経束からADCCVを記録した。</p><p>【結果】同定した腓腹筋C線維(187例)のうち、機械非感受性線維は143例(約76%)であった。このうち17例(C線維の約9%)のADCCVは顕著に遅延し(-10%以下)、MIAであると考えられた。さらに、この17例のうち9例の腓腹筋に炎症スープを投与したところ、3例は投与3~10分後に新たに機械感受性を示した。一方、機械非感受性線維(143例)のうち、108例(C線維の約58%)のADCCVは-5%以上と遅延度が小さかったが、腰部交感神経幹の遠心性刺激により同定した腓腹筋交感神経(3例)のADCCVも約-4.2~-1.1%と小さく、大部分は交感神経である可能性が考えられた。</p><p>【考察】腓腹筋C線維のうち、約9%はMIAであり、その一部は実験的炎症(病態)により活性化し、サイレントからアクティブにモーダルシフトすることがわかった。また、腓腹筋C線維に占める交感神経の割合は皮膚での報告(約16%、Taguchi et al. 2010)と比較して高いことが示唆されたが、過去の形態学的研究(約44%、Baron et al. 1988)とも類似している。</p><p>【結論】骨格筋におけるMIAの存在を実証し、その一部が実験的炎症により活性化し、新たに機械感受性を獲得することを示した。また、腓腹筋に分布する交感神経の割合および軸索特性を明らかにすることができた。これらの結果は筋機械痛覚過敏の末梢神経機構に重要であるだけでなく、筋細径線維受容器の新規分類法の確立に役立つと考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は「帝京大学動物実験に関する倫理委員会」の承認を得て行った(承認番号:帝動倫17-025号)。本研究に関連し、開示すべき利益相反はない。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-153_2-I-153_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134600448
  • NII論文ID
    130007694161
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-153_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ