α-tACSは視覚運動学習時の誤差修正を促進する

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抄録

<p>【はじめに,目的】経頭蓋交流電気刺激(transcranial alternating current stimulation: tACS)による交流電流は、短期間のシナプス可塑性をもたらすとされている.運動学習については一次運動野に対するα(α-tACS)及びβ(β-tACS)帯域をターゲットとした刺激が報告されているが,いずれの報告も課題施行中の刺激であり,課題施行前のtACSが運動学習の習熟度に及ぼす影響に関する報告はない.</p><p>そこで今回我々は,課題施行前の一次運動野に対するtACSが視覚運動学習課題に及ぼす影響について調査した.</p><p>【方法】18歳以上の右利き健常者33名を対象とした.視覚運動学習課題は,ディスプレイ上のポインターをレバー式コントローラーでターゲットに到達させる課題を用いた.ターゲットは5方向とし、各ターゲットはランダムに呈示した(1 block)。Baseline Task(BT)ではコントローラーとポインターとの間で操作誤差なし課題を40block実施し,Training Task(TT)では±30°の操作誤差あり課題を40block実施した.各課題における5 blockの平均誤差角度を学習指数として定義した(BT1-BT8,TT1-TT8).tACSはDC-STIMULATOR Plus(NeuroConn GmbH製)を使用し,BTとTTの間で実施した.刺激部位は左一次運動野直上の頭皮とし,リファレンス電極は右眼窩部とした.刺激パターンはα-tACS,β-tACS,およびSham刺激(各11名)とし、1mAの刺激強度で10分間実施した.</p><p>統計学的解析はSPSS(Ver.22.0)を使用し,BT1-BT8,BT8-TT1,TT1-TT8に対して反復測定分散分析(stimulation×block)を行った.</p><p>【結果】反復測定分散分析の結果,BT-8-TT1間で交互作用を認めた(p<0.05).多重比較検定(Bonferroni法)の結果、TT1におけるα-tACSの平均誤差角度がsham群及びβ群に比較して有意に小さいことを示した(sham vs. α-tACS,p=0.04;α-tACS vs. β-tACS,p=0.001).</p><p>【考察】本研究の結果は,BT8とTT1間の平均誤差角度がsham群及びβ-tACSと比較してα-tACSで有意に小さいことを示した.Pollokら(2015)は課題中のα-tACSが運動学習に効果を示すと報告しており,Kastenら(2016)はα-tACSの効果が刺激後70分間持続することを報告している.本研究では誤差課題前の10Hz-tACSで、刺激後に有意な誤差修正が認められたことから、10HzでのtACS介入後においても誤差修正を促進できる可能性が示された.</p><p>【結論】視覚運動課題前のα-tACSが誤差修正を促進した。リハビリテーション実施前の10Hz-tACSがリハビリテーションの効果を高める可能性があると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、個人が特定されることがないように配慮した。また対象者には書面にて研究の趣旨を説明し、調査・測定したデータを研究に使用する同意を得た。なお、本研究は大分大学医学部倫理委員会の承認を受けて実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-78_2-I-78_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134613120
  • NII論文ID
    130007694313
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-78_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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