急性期・回復期理学療法士における腰痛の実態調査と今後の課題

  • 和田 善行
    社会医療法人 平成記念会 平成記念病院 リハビリテーション科
  • 萩原 輝郎
    社会医療法人 平成記念会 平成まほろば病院 リハビリテーション科
  • 徳田 光紀
    社会医療法人 平成記念会 平成記念病院 リハビリテーション科
  • 唄 大輔
    社会医療法人 平成記念会 平成記念病院 リハビリテーション科
  • 永澤 大
    社会医療法人 平成記念会 平成記念病院 リハビリテーション科
  • 降矢 芳子
    社会医療法人 平成記念会 平成記念病院 リハビリテーション科

書誌事項

タイトル別名
  • ~アンケートによる腰痛の発生に関与する要因のリスクアセスメント~

説明

<p>【はじめに、目的】平成28年国民生活基礎調査の性別にみた有訴者率の上位5症状のうち,腰痛は男性で1位,女性で2位と多く,我々にとって身近な症状といえる.その中で平成27年労働安全衛生調査の「腰部に負担のかかる業務従事労働者の有無及び業務内容別事業所割合」では,運輸業・郵便業,鉱業・採石業を抜いて医療・福祉の分野で多くなっている.他の業種と比べ理学療法士は専門的な知識を有しているにも関わらずこのような現状は問題であり,更には腰痛予防の取り組みは十分になされていない.そこで今回,腰痛予防の取り組みを行うにあたり当法人理学療法士における腰痛の実態調査を実施した.</p><p> </p><p>【方法】当法人の急性期,回復期病棟で勤務している理学療法士107名を対象とした.腰痛の実態調査として,性別,臨床経験年数,就労後の腰痛経験の有無,腰痛が生じた病院内の場所,姿勢,作業内容について自由記述形式で実施した.</p><p> </p><p>【結果】調査の回収率は100%,有効回答率は94.3%(無記名4名)であった.理学療法士103名(男性61名,女性42名,経験年数は1~3年64名,4年目以上39名)のうち,就労後の腰痛経験有りは63名(61.2%),男性37名(60.6%),女性26名(61.9%)であり,無しは40名(38.8%)で全体の60%以上の理学療法士が腰痛を経験していた.臨床経験年数別では1~3年目32名(50.0%),4年目以上31名(79.4%)であり,4年目以上が多い結果となった.腰痛が生じた病院内の場所ではベッドサイド47名(68.1%)であり,姿勢は中腰26名(44.8%),前傾姿勢25名(43.1%),作業内容は移乗43名(67.1%),ポジショニング10名(15.6%)との回答が多かった.</p><p> </p><p>【結論】腰痛は医療・福祉の分野で多いにも関わらず,腰痛予防の取り組みは十分になされていない.今回,腰痛予防の取り組みを行うにあたり当法人の急性期,回復期理学療法士における腰痛の実態調査を実施した.結果,ボディメカニクスの知識を有し,技術的にも介助が行える理学療法士でも急性期・回復期問わず全体の60%以上が就労後に腰痛を生じており,ベッドサイドでの中腰・前傾姿勢を伴う移乗・ポジショニングに多い傾向があることがわかった.また,経験年数が増えるにつれて腰痛を経験している割合が多かった.急性期のリハビリテーションでは移乗やポジショニング,回復期のリハビリテーションでは立ち上がりや歩行介助の機会が多く,腰痛発生のリスクが高い.一旦腰痛を発症すると再発率が高く,腰痛による休職はマンパワー不足になり、新たな腰痛を生み出す可能性も考えられる.現在,当院の腰痛予防対策で行われている多くがコルセット着用や,移乗方法の勉強会など個人レベルや対症療法が多い為,今後は入職して早い時期から急性期・回復期理学療法士を対象に労働衛生教育を開始して,腰痛発生に関与する要因をもとに労働衛生3管理の健康管理,作業管理,作業環境管理について腰痛予防の取り組みを行う必要がある.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に研究内容および目的について十分な説明を行い同意を得たうえで実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-134_1-C-134_1, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134842240
  • NII論文ID
    130007692677
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-134_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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