介護予防事業の効果及びサルコペニアのサロゲートマーカーとしての下腿周径に影響を与える因子の検討

DOI
  • 正井 美幸
    公立羽咋病院リハビリテーション科 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻
  • 北谷 正浩
    公立羽咋病院リハビリテーション科
  • 山崎 俊明
    金沢大学医薬保健研究域保健学系理学療法科学講座

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>サルコペニアは高齢者においては有病率が高く、早期からの予防が重要であるといわれているが、筋肉量を測定する方法は容易ではないため、簡易的なスクリーニング方法が求められている。先行研究で下腿周径の測定はサルコペニアの診断に有効と述べられているが、下腿周径に影響を与える因子についてはあまり研究されていない。そこで本研究は、介護予防事業の効果をサルコペニアと非サルコペニア群で群分けして調べるとともに、サルコペニアのサロゲートマーカーとしての下腿周径に影響を与える因子について検討した。</p><p>【方法】</p><p>対象者は二次予防対象高齢者とした。サルコペニア診断のアルゴリズムはAWGSの診断手順を参考に用い、測定項目は四肢骨格筋量、下腿周径を含めた身体機能項目とした。また介入の前後に介護予防基本チェックリストをアンケートした。プログラムは週1回90分間とし、15回介入した。</p><p>【結果】</p><p>両群ともに介入前後で身体機能に変化はなかった。また群間比較では、筋肉量において有意差は見られなかった。介護予防基本チェックリストにおいてサルコペニア群で閉じこもりが有意に多かったが、介入後には有意差が見られなくなっていた。重回帰分析の結果、下腿周径に最も影響を与えている因子は四肢骨格筋量あり、筋肉量と下腿周径の相関が高い群と低い群を比較すると、高い群において下肢筋肉量が有意に高かった。</p><p>【考察】</p><p>本研究において、サルコペニアと判定された人は30名であった。サルコペニアと非サルコペニアとで身体機能に差が見られたが、筋肉量に差がなかった。筋肉量に差がなかったのは、非サルコペニアの人でも筋肉量の減少のみを認め、身体機能や筋力の低下を認めない前サルコペニアの人が多かった可能性も考えられる。世界保健機構によって高齢者に対して週に150分の中等度有酸素運動が推奨されている。今回の介入では90分の介入であったため、身体機能が有意に向上しなかったと考えられる。また介護予防基本チェックリストによる閉じこもり傾向の改善が見られた。サルコペニアでは閉じこもり傾向が多く、またその改善には、通所型介護予防事業への参加が有効とする先行研究がある。今回の介入は活動性向上の効果があり、また下腿周径は体脂肪率より筋肉量をより反映していることが示唆されたが、それ以外の要素の影響も考えられ、今回の研究項目からではその他の因子を割り出すことはできなかった。しかし筋肉量と下腿周径の相関が高い群と低い群との比較で下肢筋肉量に有意な差が見られ、下肢筋肉量が大きい者ほど、下腿周径からサルコペニアの診断が予測しやすい可能性も示唆された。今後介護予防事業のより効果的な介入方法、およびサルコペニアの簡易的評価方法をさらに検討する必要性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象には事前に本事業の目的、日程、運動を行う際の注意事項などを書面、口頭にて十分に説明した上で書面にて同意を得た。本研究は金沢大学医学倫理審査委員会の承認(№750-1)を得て行われた。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-125_1-C-125_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134844672
  • NII論文ID
    130007692703
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-125_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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