市販の計測機器を用いた脊髄損傷者の活動量の計測方法の検証

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抄録

<p>【はじめに、目的】脊髄損傷者(以下脊損者)には特有の合併症状があり,その一つに褥瘡がある.脊損者における褥瘡発生率に関して,様々な要因が先行研究により挙げられており,その一つに健康状態が関与するという報告もある.健常人では健康の維持増進に関する指針が活動量で提示されている.しかし,脊損者に対して健康の目安となる指針は見られなかった.また,脊損者に対して実際に活動量を計測した報告は見られなかった.</p><p>本研究は,脊損者における移動距離計測方法の検証及び移動距離と活動量の関係性を検証することを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>1 対象</p><p>当院併設施設入所中で,日常の移動手段が車椅子の脊損者5名.</p><p> 2 方法</p><p> 被験者の車椅子の左右駆動輪にサイクルメーター(キャットアイ社製 VELO9 CC-VL820)を,クロスバーにスマートウォッチ(GARMIN社製 vivoactive J HR)を取り付けた.また,被験者の下衣の腹部に活動量計(オムロン社製 ActiveStylePro HJA-750C)を装着した.</p><p> サイクルメーターで車椅子の移動距離と車椅子駆動時間,スマートウォッチで車椅子の移動距離と計測時間を,活動量計で被検者の1分ごとの活動量を計測した.</p><p> 計測は各人3日間連続して行い,8時から17時の計9時間を計測した.また,計測期間中に特別に運動や活動の制限は設けなかった.</p><p> 3統計処理</p><p> 統計処理は危険率5%未満を有意とし,左右のサイクルメーター,スマートウォッチの移動距離を一元配置分散分析,左右サイクルメーターの駆動時間に対応のあるt検定を行った.</p><p> 活動量は計測時間中の1分ごとの活動量から1日のエクササイズの総和を算出し,同日の移動距離との相関係数を求めた.</p><p>また,被験者ごとに3日間の活動量の分布を算出し,平均値を代表値としてヒストグラムで示した.</p><p>【結果】移動距離は左右のサイクルメーター,スマートウォッチの3者間に有意差は認められなかった.(p=0.12)</p><p>車椅子駆動時間は左右サイクルメーター間に有意差は認められなかった.(p=0.94)</p><p>エクササイズと,移動距離の間に有意な相関が認められた.(p=0.001 r=0.79)</p><p>計測されたMETsはすべての被験者にて1より大きく,1,5以下の範囲の値が多く示された.</p><p>【結論】脊損者の身体活動量の計測方法の検証を行った.今回の計測で得られた機器間の値に有意な差は認められず,左右駆動輪の間にも駆動距離に有意な差は認められなかったため,今後の計測では単一機器での計測が可能でないかと考えられた.また,エクササイズと移動距離の間に有意な相関がみられたが,計測されたMETsの値は歩行相当である3を超えるものは少なく,脊損者の活動量が向上する他の要因の検討も必要であることが分かった.</p><p>本研究は平成29年度科学研究助成事業(科学研究補助金)(奨励研究)課題番号17H00721の交付を受けて行われた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は神奈川リハビリテーション病院倫理委員会の承認を得(承認番号:krh-2017-4),被験者には書面と口頭で説明し同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-72_2-C-72_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134850048
  • NII論文ID
    130007692770
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-72_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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