装具装着による起立動作時の筋活動変化

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抄録

<p>【はじめに】</p><p> 理学療法の臨床現場において、脊椎椎体圧迫骨折の症例を頻繁に経験する。軽度の外傷で発症した椎体骨折を有する高齢者の場合、起居動作や体動時の痛みを防ぎ、骨折部の屈曲・伸展・捻転の動きを制限する目的で、ギプス固定よりも軟性装具が処方されることがある。過去の研究では、装具装着による起き上がり動作や歩行への影響についての報告はされているが、起立動作についての報告は少ない。圧迫骨折の症例に対する理学療法で、装具を装着した状態で起立練習を行う場面は臨床上多くみられる。その際に装具を装着することによる、身体に対する影響を考慮し行う必要があると考える。そこで、装具装着の有無が起立動作時に及ぼす影響の一つとして、筋活動について筋電図を用い検討する。</p><p>【方法】</p><p> 骨関節疾患・心疾患・呼吸器系の疾患既往歴のない健常成人女性17名(平均年齢25.29±1.52歳)を対象とした。起立動作測定時の開始肢位として、体幹直立位、下肢各90°屈曲位、左右それぞれ裸足で、肩幅と同様の間隔に離し、足底を全面接地させた。メトロノームのリズムに合わせて1秒間、2秒間、3秒間の異なる3つの速度パターンに分けて起立動作を行った。起立開始から終了までを1秒間と設定した起立動作、2秒間と設定した起立動作、3秒間と設定した起立動作の異なる3種の起立時間を設定した。無線式EMG測定装置EMGmaster(メディアエリアサポート企業組合社製)を用いて脊柱起立筋、大腿二頭筋、大腿直筋、前脛骨筋各筋の筋活動を測定した。装具無と装具有の場合に各筋における平均値の差の検定には一対のt検定を用いた。また装具の有無により有意差があった筋に対して、速度間の平均値の差の検定を一元配置分散分析により行った後、Tukey法による多重比較検定を行った。有意水準は、5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p> 脊柱起立筋と前脛骨筋は装具有では、装着無と比較して筋活動は有意に減少した。両筋については速度間の筋活動において、有意差は認められなかった。</p><p>【結論】</p><p> 装具の装着による腰椎屈曲角度の制限にともない、起立動作時、体幹前傾相における脊柱起立筋の腰椎伸展位保持作用と骨盤前傾作用が低下したことにより、脊柱起立筋の筋活動が減少したことが推察される。また身体重心の前方への移動が制限され、それにともない前脛骨筋の筋活動が減少したことが考えられる。装具使用が長期間続くことにより、廃用性の筋力低下が生じる可能性があり、脊柱起立筋の腰椎伸展位保持への作用が低下することで、腰椎圧迫骨折の再発のリスクが高まることも予測される。長期間の装具着用は避けることと、装着中より深層筋群の賦活を促し、動作において能動的に腹圧を高めトレーニングを行うことが必要である。再骨折のリスクを予防するために、起立動作において腰椎への負担を減らす様、腰椎伸展位保持を意識した動作指導を日々行うことも必要だと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施した。対象者には研究の趣旨、個人情報の保護に対する配慮を口頭にて説明し、同意を得た。データ管理においては、個人が特定できないように匿名化を行った。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-97_1-C-97_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134856960
  • NII論文ID
    130007692832
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-97_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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