中大脳動脈島部閉塞における歩行自立度に影響する因子の検討
説明
<p>【はじめに】</p><p>脳梗塞の予後予測に関する研究は多数報告されており、脳画像や病態の理解は重要な因子である。そのなかで、中大脳動脈島部の閉塞(以下M2閉塞)においては、解剖学的にレンズ核線条体動脈の遠位に位置するため下肢機能の予後は良好とされている。その一方で実際の臨床場面においては、歩行自立に難渋する症例もしばしば経験する。そこで本研究では、M2閉塞患者における歩行の自立度に影響する因子を検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は、2016年3月から2017年3月までに当院に入院した脳梗塞患328名のうち、初回発症かつMagnetic Resonance AngiographyにてM2閉塞と医師により判断された27名とした。情報収集は診療録等から後方視的に行い、収集項目は年齢、性別、病前および退院時Functional Ambulation Categories(以下FAC)、初回時および退院時下肢Brunnstrom stage(以下Brs)、初回時Japan Coma Scale(以下JCS)、合併症の有無、認知機能低下の有無、離床開始期間、理学療法実施単位数とした。解析は、まず、対象を退院時のFACが0-3であった群(介助群:12名)と4-5であった群(自立群:15名)の2群に分け、各項目における2群比較を行った。その際に、正規性を示さなかったパラメトリックデータと、FAC・Brsに対してはMann-WhitneyのU検定を行い、その他の項目に対してはχ2検定を行った。その後、歩行介助・自立を従属変数に、2群比較にてp<0.01を示した項目を独立変数として、ロジスティック回帰分析を行った。なお、独立変数間において強い相関は認めなかったため独立変数の削除は行わなかった。</p><p>【結果】</p><p>2群比較の結果、有意差を認めた項目は年齢(介助群:中央値90歳/自立群:中央値73歳)、合併症の有無(あり:10例、なし:2例/あり:3例、なし:12例)、認知機能低下の有無(あり:10例、なし:2例/あり:3例、なし:12例)(p<0.01)、性別(男性:4名、女性:8名/男性:12名、女性:3名)、初回時下肢Brs(4.5/6)(p<0.05)であった。病前FAC(5/5)、初回時JCS(1桁:9名、2桁:3名/1桁:15名、2桁:0名)、退院時下肢Brs(6/6)、離床開始期間(中央値3.0日/中央値4.0日)、理学療法実施単位数(中央値2.09/中央値1.93)では有意差を認めなかった。ロジスティック回帰分析の結果、モデルに採択された項目は年齢(p<0.05、オッズ比:0.71)、合併症の有無(p<0.05、オッズ比:58.8)であり、判別的中率は92.6%であった。</p><p>【考察】</p><p>M2閉塞患者における歩行の自立度に影響する因子を検討した今回の結果では、ロジスティック回帰分析にて年齢と合併症の有無が採択された。このことから、M2閉塞における下肢機能の予後は良好ではあるが、高齢発症および合併症は歩行自立度に大きく影響し、それらを熟慮したアプローチが重要であることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>後方視的研究となるため、個人情報の取り扱いに十分留意した。また、当院倫理委員会の承認を得て実施した。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), E-188_1-E-188_1, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763134877184
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- NII論文ID
- 130007693090
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可