脳卒中片麻痺者の歩行中の関節可動域と歩行速度の関係

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  • -ImageJを用いた矢状面上2次元歩行解析-

抄録

<p>【目的】</p><p> 臨床において歩行分析は視覚的に行われ、いわゆる歩容を質的に評価することが多く、数値化されることが少ない。いくつかの視覚的歩行分析評価スケールが開発されているが、普及しているとは言い難く、結果として歩行の評価、治療、および効果判定は主観的になりやすくなる。本研究の最終目的は、臨床において、比較的簡便に可能な歩行の運動学的評価を行い、その結果を治療計画や効果判定に用いることである。今回は初期段階として、矢状面における歩行中の下肢関節角度と歩行速度の関係を調査した。</p><p>【方法】</p><p> 対象は当院に入院した脳卒中者15名であった(年齢61.5歳、女性5名、発症から計測まで84.9日)。取り込み基準は歩行補助具および装具なく10m以上の自力歩行が可能なものとした。歩行中の関節角度を計測するため、肩峰、大転子、大腿骨外側上顆、外果直下の踵骨、第5中足骨頭部に蛍光色の卓球ボールをクラフト粘着テープで貼付し計測マーカーとした。対象者は快適歩行速度で約16mの直線歩行路を2回歩行し、その様子を約5m離れた矢状面からスマートフォンを三脚に固定し撮影した(1080p×30fps)。撮影した動画から、ImageJ(NIH)を用いて各マーカーの座標情報を抽出した。座標情報は計測ノイズを除去するためBryantのフィルタを用いて平滑化を行い、エクセルを用いて座標情報から股、膝、足関節角度およびTrailing limb angle(TLA)を算出した。TLAは肩峰、大転子、第5中足骨頭部から算出した。算出した角度はエクセルのマクロを用いて100%に時間の正規化を行った。得られた関節角度データから股、膝、足関節最大屈曲および伸展角度、屈曲伸展可動範囲を抽出し、麻痺側と非麻痺側の比較、および各変数と歩行速度との相関係数を計算した。</p><p>【結果】</p><p> 対象者の歩行速度は中央値1.01m/sec、最大値1.46m/sec、最小値0.12m/secであり、0.4m/sec未満が2名、0.4~0.8m/secが2名、0.8m/sec以上が11名であった。麻痺側の各関節の最大屈曲(背屈)/伸展(底屈)角度/可動範囲は、股関節31/2/33度、膝関節60/15/44度、足関節16/10/25度、そしてTLAが16度であった。股、膝、足関節可動範囲、および膝最大屈曲角度は、麻痺側が非麻痺側よりも有意に小さかった(p < 0.05)。歩行速度と関連の認められた関節は麻痺側の膝最大屈曲角度、膝屈曲伸展可動範囲、麻痺側の足背屈底屈可動範囲、麻痺側TLAであった(それぞれr=0.522, 0.580, 0.642, -0.635, すべてp < 0.05)。</p><p>【考察】</p><p> 自力歩行可能な対象者であったため、比較的歩行能力の高いものが多かった。歩行中の麻痺側の関節角度は基礎運動学に記載の歩行データと比較すると、すべての関節において可動範囲は小さいようであった。今回の結果から、麻痺側の膝屈曲伸展角度は、stiff kneeや、crouch gaitでないこと、麻痺側の足背屈底屈角度およびTLAはankle rocker、push offに関連し、歩行速度との関連を認めたと考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者には研究の概要、参加が任意であること、参加しなくても一切の不利益がないこと、いつでも参加撤回できること、個人情報の取り扱いなどを口頭、および書面にて説明し、研究参加の同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-190_1-E-190_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134878080
  • NII論文ID
    130007693104
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-190_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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