矢状面鉛直線に対する各骨指標の距離をもとにした立位姿勢の分類について

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抄録

<p>【目的】Kendallら(1993)は矢状面からの立位姿勢を脊柱彎曲・骨盤傾斜・下肢アライメントから4つの典型的な姿勢に分類した.この分類は主観的であり,客観的な指標は提示されていない.例えば矢状面からみた立位に対して鉛直線を引き,いくつかの骨指標との距離という客観的指標をもとにした姿勢分類はできないだろうか.その試みが本研究の目的である.</p><p>【方法】対象は,運動器疾患のない健常成人23名(男性13名,女性10名;年齢20.7±1.0歳,身長167.0±6.5cm,体重60.2±9.2kg)とした.デジタルスチルカメラ(カシオ社製EX-FH100:カメラ)を用いて,被検者の利き手側(撮影側)矢状面から立位姿勢を撮影した.被検者の撮影側耳垂・肩峰・上前腸骨棘(ASIS)・上後腸骨棘(PSIS)・大転子・腓骨頭・外果に直径2cm及び2.5cmの赤色球マーカーを貼付した.被検者には撮影側矢状面を垂直にカメラに向けて,足幅10cm,両上肢を自然に垂らした安楽な立位姿勢となってもらった.カメラは三脚上に各被検者の立位時大転子の高さで水平に固定し,被検者から1.5m離して設置した.撮影した画像は画像解析ソフトImage J ver.50.1(フリーウェア)で再現し,ソフト上で各被検者の外果を通る鉛直線を引いた.その鉛直線から耳垂・肩峰・大転子・腓骨頭に対して垂線を引き,各々のピクセル距離を計測した.骨盤傾斜角度は画像上の水平線に対するASISとPSISを結ぶ線の傾きとした.全被検者の各パラメータ(鉛直線~腓骨頭・大転子・肩峰・耳垂の距離,骨盤傾斜角)の平均と標準偏差(sd)を求め,各パラメータごとに平均より小さい・大きい,平均±標準偏差をそれぞれ超えた4段階で評価した.これらのパラメータをもとにして被検者の姿勢を分類するために階層的クラスター分析を行った.クラスタリングの方法にはウォード法,距離測度にはユークリッド距離を用い,出力されたデンドログラムを観察して最も弁別しやすい階層段階でグループ分けした.以上の統計解析にはR2.8.1(CRAN)を使用した.</p><p>【結果】デンドログラムによる分類では,①鉛直線からの各パラメータ距離が前方に大きく骨盤前傾が大きい群(男性4名,女性2名),②鉛直線からの下肢の各パラメータの距離が前方に大きく骨盤後傾が大きい群(男性6名,女性2名),③鉛直線からの各パラメータの距離が小さい群(男性0名,女性3名),④鉛直線からの各パラメータの距離が小さく骨盤前傾が大きい群(男性3名,女性3名)の4グループに分けることができた.</p><p>【考察・結論】矢状面からの姿勢を分類するために,鉛直線からの骨指標の距離と骨盤傾斜角を利用することは有効と考える.今回の研究では,脊柱の彎曲に対する評価測定は行っていないが,脊柱の彎曲に対する評価方法も確立して加えることができれば,より明確な立位姿勢の分類が可能になると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿って行い,筆頭演者所属の倫理委員会により承認を得た(整理番号:HS2016-043).対象者には研究の目的・方法を十分説明した後,書面への署名によって研究参加への同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-131_1-H2-131_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134926848
  • NII論文ID
    130007693633
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-131_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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