カッティング動作で懸念されるknee in & toe outがなぜ男性には生じにくいか
書誌事項
- タイトル別名
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- -筋出力から男女を比較して識別する-
説明
<p>【はじめに】 バスケットボール競技はカッティング動作(cutting action:CA)が多用される。CAは膝前十字靭帯(anterior cruciate ligament ; ACL)損傷をきたす事は周知の通りであり、膝関節外反・下腿外旋位(Knee in&Toe out)の肢位で生じやすく、女性はその肢位をとる傾向があるため非接触型ACL損傷が懸念されている。そこで、CAの下肢筋活動の基礎データを得て、なぜ女性がKnee in & Toe outの肢位を生じやすいか、なぜ男性がACL損傷を比較的起こさないか、その要因を精査し、障害予防につながるか検討した。</p><p>【方法】 対象は本校に在籍する40名とした(男性20名、女性20名)。平均年齢20.5±0.7歳、平均身長は男性170.0+4.9cm、女性161.0±5.8cm、平均体重は男性60.0±6.1kg、女性54.2±4.5kgであった。測定は三軸加速度内蔵四極多点EMG(Delsys社製、DelsysyTrigno)を使用した。事前に超音波画像診断装置(日立社製、prosound2)で対象の筋を確認し、センサーを貼付した。筋は軸足(蹴り足の反対側)の中殿筋、外側広筋、大腿直筋、内側広筋、長内転筋、大腿二頭筋、半腱様筋、前脛骨筋、腓腹筋とし、男女の筋力を部位別に比較した。また、外側広筋と内側広筋を比べたものをQ・L/M比、大腿二頭筋と半腱様筋を比較したものをH・L/M比とした。方法はチェストパスを出し、5mの助走の後CAを行った。チェストパスの距離は図子らの研究に基づきバウンドせずに5m、CAはパス方向で角度は45°に統一した。</p><p>【結果】 筋出力(単位:m・V/sec)を性差で比較した。外側広筋は男性1.01±0.75、女性0.60±0.49(p<0.05)であり有意差を認めた。大腿二頭筋は男性0.61±0.52、女性0.31±0.2(p<0.05)と有意差があった。長内転筋は男性0.67±0.69、女性0.27±0.25(p<0.05)と有意な差を示した。前脛骨筋は男性0.56±0.62、女性0.22と男性が有意に高かった(p<0.01)。Q・L/M比は男性1:0.80、女性1:1.24、H・L/M比は男性1:0.97、女性1:1.3であった。</p><p>【考察】 外側広筋はCAの推進力に働くとされ、また、膝の安定性とも因果関係があるとの報告がある。さらに、大腿二頭筋、前脛骨筋に有意差が生じたことにより、膝関節屈曲にも影響を及ぼしたと考える。これらを鑑みると、男性はCA時に膝の外側安定機構が働くため、足関節の安定性も増し、重心位置も運動連鎖によって低くなり、knee in & toe outが起きにくいと思われる。さらに、膝の外側安定機構の働きに呼応して、長内転筋が収縮することで膝の安定性を高めている事が考えらえた。女性は、男性と比べると膝の外側安定機構の働きが弱く、側方重心への支えが惰弱していることにより、knee in & toe outの肢位になりやすいと考えた。加えて、Q・L/M比、H・L/M比ともに女性は内側が高く、膝の外側安定機構を代償していることが示唆される。膝の外側安定機構がCA動作の安定性とACL損傷を予防する一助となることが示された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、得られたデータは個人を特定できないように連結匿名化する。また、個人情報の処理を行うパソコンは外部との通信ができない状態にするなどの措置を講じる。研究者が対象者に研究の概要・目的・方法等を別紙の「説明文書」で説明を行う。また、研究結果は研究終了後、本人に伝える。研究への参加、不参加、及び研究途中での撤回については、いかなる不利益も受けない事を説明し、文書に記載し、自由意志による同意を得る。なお、本研究は本校倫理審査委員会の承認を得て実施した。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-219_1-H2-219_1, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763134944640
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- NII論文ID
- 130007693854
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可