足関節固定術と人工足関節全置換術における関節可動域の比較と理学療法

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抄録

<p>【目的】日常生活動作(ADL)に支障を来す中等度から末期の変形性足関節症(OA)に対し,脛骨前方移動埋め込み移植術による足関節固定術(固定術)または人工足関節全置換術(TAA)が行われる.今回,関節可動域(ROM)を術式別と術式間で比較することで術前から開始した理学療法の効果を検討した.</p><p>【方法】対象は2014年8月~2017年10月の間に手術を行った33名33関節,内訳は固定術群14名14関節とTAA群19名19関節である.すべてOA(OA の病期分類3a期2名,3b期7名,4期21名),年齢は51歳~80歳の平均68.3歳,男性14名,女性19名である.評価項目は足関節のROMで,理学療法開始時(術前)と術後6か月(術後)で測定し,術式別は術前後,術式間は術後で比較した.理学療法は,術前は患側の関節可動域運動(ROMex)と足関節周囲筋の筋力増強運動を実施した.術後4週間のギプス固定中,患側の足関節周囲筋の等尺性収縮運動,患部外と健側の筋力増強練習,ギプス除去後は自動運動から他動運動へと段階的なROMex,ゴムバンドを用いて筋力に応じた負荷を加えた筋力増強運動とADL練習を術後6ヶ月の測定時まで継続して行った.統計学的解析はt検定を用い,有意水準は5%未満で行った.</p><p>【結果】術式別では,術前後において術後に固定術群の底屈で有意に低下,外がえしで有意に改善,他の方向に有意差は認められなかった.TAA群は内がえしで有意に改善,他の方向に有意差は認められなかった.術式間では,背屈は固定術群9.3°とTAA群13.7°,底屈は固定術群34.3°とTAA群45.8°と,固定術群に対してTAA群の背屈と底屈で有意に高値を示した.内がえしと外がえしでは有意差は認められなかった.</p><p>【考察】有意差のあった固定術群の底屈は距腿関節を固定したこと,外がえしは手術によりアライメント矯正されたためと考える.TAA群の内がえしで有意に向上していたことは理学療法の成果と考える.また,どちらの群もADLに支障が生じるといわれている背屈で術後もROMが維持できていることは,術前からの運動療法により軟部組織の柔軟性改善が得られ,かつ筋力向上練習の成果と考える.術式間の比較からTAA群の背屈と底屈で有意に高値となった理由は,関節置換により距腿関節のROMが向上したからと考える.今回の調査で,両術式は除痛とアライメント矯正に加えて,固定術は距腿関節の安定性の獲得,TAAは関節可動性の獲得ができるという術式の違いが明確になった.</p><p>【結論】術前からの継続した理学療法により,固定術群の底屈のみ術後に低下が認められたが,他の方向ではROMは改善または維持できていた.TAA群はすべての方向において,ROMの改善または維持が認められた.術式間では固定術群に対しTAA群の背屈と底屈で良好なROMが得られていた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,対象となる症例各位に対し口頭にて十分な説明を行い書面にて同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-248_1-H2-248_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134949632
  • NII論文ID
    130007693909
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-248_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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