特発性側弯症患者3例の歩行時における大殿筋筋活動量の特徴

DOI
  • 落石 慶衣
    九州大学病院 リハビリテーション部
  • 藤田 努
    九州大学病院 リハビリテーション部
  • 阿波村 龍一
    九州大学病院 リハビリテーション部
  • 岡澤 和哉
    九州大学病院 リハビリテーション部
  • 高嶋 美甫
    九州大学病院 リハビリテーション部
  • 岡本 花奈
    九州大学病院 リハビリテーション部
  • 幸 博和
    九州大学大学院 医学研究院 整形外科
  • 川口 謙一
    九州大学病院 リハビリテーション部 九州大学大学院 医学研究院 整形外科
  • 中島 康晴
    九州大学病院 リハビリテーション部 九州大学大学院 医学研究院 整形外科

抄録

<p>【はじめに】特発性側弯症(以下,AIS)は,側弯部位や程度によりLenke分類においてtype1~6に分けられる.胸郭の存在などにより可動性が少ない胸椎に比べ,可動性が大きい腰椎に側弯があるtypeでは脊柱全体としての可動性が制限されると考えられる.そこで今回,腰椎に構築的な側弯を呈しているtype3,5の症例における歩行時の脊柱起立筋と大殿筋の筋活動量の左右差を調査し,歩行時に隣接関節へ与える特徴を明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】対象は,2017年6月から2018年3月において当院整形外科を受診し,AIS Lenke type3もしくは5と診断された女性3例(平均年齢27±6.38歳)とした.3例とも,腰部cobb角が臥位側屈X線像で25°未満に矯正されない構築的な側弯を呈していた.課題動作として快適速度での10m歩行を全例独歩にて測定した.左踵にフットスイッチセンサーを貼付し,1歩行周期を同定した.計測回数は2 回とし,歩き始めから5 歩目以降のデータを解析対象とした.表面筋電図(以下,EMG) の計測は EMG マスター KmMercury(メディエリアサポート企業組合社製)を用いた.測定筋は,左右の第3腰椎レベルの脊柱起立筋,大殿筋上部繊維とした.EMG処理に関して,積分筋電図(integrated electromyogram;以下,IEMG)解析を行った.次に,得られたフットスイッチ信号から1歩行周期時間を算出し,各被検者の1歩行周期時間を100%に換算した.各被検者の2回の歩行から任意に5ヵ所の歩行周期を取り出し,歩行時のIEMGはすべてMVC時のIEMGで補正し,相対的IEMG(以下,%IEMG)とし,歩行周期5%刻みで,20個に分けて加算平均した.その中から1歩行周期における脊柱起立筋,大殿筋の最大%IEMGの左右差を求めた.</p><p>【結果】脊柱起立筋最大%IEMGの左右差は3.3%±2.9,大殿筋最大%IEMGの左右差は12.4%±3.8であり,3例とも脊柱起立筋に比べ大殿筋で左右差が大きかった.また,主カーブにおける凸側に比べ凹側の大殿筋最大%IEMGが高かった.</p><p>【結論】3例とも歩行時における最大%IEMGは脊柱起立筋に比べ大殿筋で左右差が大きかった.腰椎に構築的な側弯を呈しており,歩行時において腰椎の可動性が乏しく隣接関節である股関節で代償的な運動が起きていると推測される.先行研究によると,AIS患者における歩行の特徴として凹側立脚期に股内転モーメントが大きくなると報告されている.今回の結果においても,主カーブにおける凸側に重心線が偏位するため凹側立脚期に重心をより中心に戻すことが必要となり,外転作用がある凹側の大殿筋上部線維の最大%IEMGが凸側に比べ高かったと考えられる.腰椎に構築的な側弯を呈しているAIS患者の理学療法を実施するうえで,脊柱起立筋だけでなく股関節周囲筋にも着目して評価や治療を行っていく必要があることが示唆された.今後,症例数を増やすとともに3次元動作解析での分析を行っていきたい.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言の趣旨に従い実施し,対象者には本研究の目的,方法を十分に説明し,同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-43_1-H2-43_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134951424
  • NII論文ID
    130007693930
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-43_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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