MBNL1発現低下がマウス骨格筋細胞のミトコンドリア膜電位に及ぼす影響

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抄録

<p>【はじめに、目的】筋強直性ジストロフィー1型(DM1)患者の骨格筋は単に萎縮するだけでなく,ミトコンドリア機能不全やアポトーシスの増加といった病態を伴うことが知られている.DM1患者では3'側非翻訳領域にあるCTGの繰り返し配列が増加しており,これに選択的スプライシング因子であるmuscleblind-like 1(MBNL1)の機能不全が関与していることが報告されている.DM1の骨格筋病態は加齢性変化(サルコペニア)と類似する点が多いため,MBNL1の機能不全がサルコペニア発症にも関与している可能性が示唆される.これまでに我々は,マウスヒラメ筋および足底筋のMBNL1発現量が加齢に伴い低下することを報告した.しかし,MBNL1発現低下が骨格筋細胞に及ぼす直接的な影響について不明である.そこで本研究では,ミトコンドリア膜電位の変化ならびにアポトーシスに着目し,MBNL1発現低下が骨格筋細胞に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.</p><p> </p><p>【方法】実験には,マウス筋芽細胞由来C2C12細胞を用いた.分化誘導72時間後のC2C12筋管細胞に対してsiRNAによってMBNL1のノックダウンを試みた.siRNA処理を行った48時間後の細胞を対象として,JC-1色素を用いた染色によってミトコンドリア膜電位を評価した.また,回収した細胞に対してBradford法を用いて細胞含有タンパク量を評価するとともに,Western blot法を用いてMBNL1,BaxおよびBcl-2発現量を評価した.</p><p> </p><p>【結果】本研究で用いたsiRNA処理により,MBNL1発現量は約80%低下した(p<0.01).MBNL1ノックダウンにより,ミトコンドリア膜の脱分極を示すJC-1 monomerで染色された細胞像の輝度は有意に高値を示した(p<0.05).また,MBNL1ノックダウンにより細胞含有タンパク量は有意に低値を示した(p<0.05).アポトーシス関連タンパクであるBax発現量はMBNL1ノックダウンにより有意に高値を示し(p<0.05),アポトーシスの指標となるBcl-2発現量に対する Bax発現量も有意に高値を示した(p<0.05).</p><p> </p><p>【結論】骨格筋細胞におけるMBNL1発現低下はミトコンドリア膜電位を変化させ,アポトーシスを誘導することが示唆された.したがって,MBNL1機能不全は筋萎縮やミトコンドリア機能不全を引き起こし,サルコペニア発症に関与することが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究の一部は,日本学術振興会科学研究費(16K16450,16K13022,17K01762,18H03160),日本私立学校振興・共済事業団「学術研究振興資金」,公益財団法人石本記念デサントスポーツ科学振興財団「助成金」,豊橋市「大学連携調査研究費補助金」および豊橋創造大学大学院健康科学研究科からの助成を受けて実施された.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-115_2-I-115_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134972160
  • NII論文ID
    130007694107
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-115_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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