股関節外転角度が側臥位での等尺性股関節外転運動時の体幹筋,股関節外転筋活動に与える影響

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>側臥位での等尺性股関節外転運動(S-IHA)は股関節外転筋の筋力検査や筋力強化の肢位として最適とされている.S-IHA時の股関節外転角度の増加により,股関節外転トルクの減少と中殿筋(GMe)活動の増加を伴うことが知られているが,大腿筋膜張筋(TFL)や大殿筋上部線維(GMa)を含めた股関節外転筋や体幹筋活動の変化は明らかにされていない.本研究の目的は,異なる股関節外転角度におけるS-IHA時の体幹筋,股関節外転筋活動の変化を検討することである.</p><p>【方法】</p><p>対象は30人の健常若年男性(平均年齢:22.1±3.5歳)で,股関節外転40°でのS-IHAが可能な者とした.測定には表面筋電計EMGマスター(メディエリアサポート企業組合製)を使用し,S-IHA時のTFL,GMe,GMa,腰部多裂筋(LM),腰方形筋(LQ),外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO)の筋活動を測定した.電極装着前に皮膚前処理剤を使用し,目標皮膚抵抗は10kΩ未満とした.課題は股関節外転0°(HA0),20°(HA20),40°(HA40)の3肢位で5秒間のS-IHAを3回ずつ実施し,負荷は下肢重量のみとした.測定順序による筋活動への影響を考慮して,全9回の測定順序はRAND関数を用いて被験者毎でランダム化した.さらに,各筋の最大随意等尺性収縮(MVIC)を5秒間測定した.得られた5秒間の生波形は全波整流後,中央3秒間の積分値を算出し,MVICにより正規化した(%MVIC).統計学的解析では,Shapiro-Wilk検定後,GMe・LM・LQ・EO・IOは反復測定一元配置分散分析,TFLとGMaはFriedman検定を実施し,Post-hoc testとしてTukey法とSteel-Dwass法による多重比較を施行した。有意水準は5%未満とした.</p><p>【結果】</p><p>分散分析の結果,全ての筋で主効果を認めた.HA0と比較してHA20ではTFLの有意な筋活動の増加を認め(p<0.05),HA20と比較してHA40ではGMa(p<0.05),TFL・GMe・IO(p<0.01)で有意な筋活動の増加を認めた.HA0と比較してHA40ではLQ(p<0.05),TFL・GMe・GMa・LM・EO・IO(p<0.01)と全ての筋で有意な筋活動の増加を認めた.</p><p>【考察】</p><p>股関節外転角度の増加により,S-IHA時の体幹筋と股関節外転筋の筋活動増加を認めた.股関節外転角度の増加に伴い,骨盤側方挙上が生じ,体幹筋と股関節外転筋長が短縮することで,筋の長さ-張力曲線により筋トルクが減少する代償として筋活動が増加したことが考えられた.</p><p>【結論】</p><p>本研究の意義として,側臥位での等尺性股関節外転運動において,股関節外転角度の増加により,股関節外転筋群に加え,体幹筋の需要が増加することが明らかとなった.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は愛媛十全医療学院倫理委員会の承認を得た(承認番号:29-04).本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施し,対象には研究開始前に目的と方法を口頭と文章で説明し,書面にて同意を得た上で測定を開始した.本研究に際して,開示すべき利益相反は無い.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-98_1-I-98_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134988032
  • NII論文ID
    130007694342
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-98_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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