社会参加に到達した13トリソミー児に対する訪問リハビリテーションの経過報告

DOI
  • 須藤 洋未
    東京リハビリ訪問看護ステーションEastサテライト江戸川 株式会社東京リハビリテーションサービス
  • 齊藤 大地
    株式会社はこぶね
  • 池田 郁江
    東京リハビリ訪問看護ステーションEastサテライト江戸川 株式会社東京リハビリテーションサービス
  • 室田 由美子
    株式会社東京リハビリテーションサービス
  • 竹中 佐江子
    株式会社東京リハビリテーションサービス

抄録

<p>【はじめに】今回、13トリソミーの児に対し訪問リハビリテーション(以下リハ)を実施する機会を得た。本疾患は1年以内生存率10%未満とのデータもあるが、合併する心疾患の治療に成功した後は比較的体調が安定し運動発達が進む場合もある。本症例は、訪問リハ開始時に2歳4か月であった。発作などの健康上のリスクと成長に対する両親の心の葛藤がある中で、訪問のセラピストとして出来ることを考え支援し、活動や社会参加等の良好な経過を得た一例を報告する。</p><p>【症例紹介】13トリソミーの男児に対し、2歳4か月より週1回訪問での理学療法を実施。生育歴は、在胎37週、帝王切開にて2352gで出生、生後4か月で自宅退院。臍帯ヘルニア、両大血管右室起始・大動脈肺動脈窓、異所性膵、口蓋裂を合併したが、手術施行済みであった。質問紙式発達検査では1歳6か月程度の遅れを認めた。心肺評価では無呼吸発作時に心拍数120回/分、SpO2は90%以下となり、モニター管理と在宅酸素を使用。1日5回経鼻栄養の注入があり、睡眠時間は短く分割していた。</p><p>【経過】体力向上・姿勢の安定・自発運動の増大を目標にプログラムを実施した。側弯の進行予防を中心とした可動域エクササイズ、自身の身体の認識を増やし姿勢や動作の経験、頸部・体幹などの安定性向上を図った。尚、リハ実施時には、無呼吸発作の要因の除去や感染症対策、関節運動は愛護的に行う事などをリスク管理として徹底した。さらに家庭で注意することの指導やアクシデント時の確認も行った。また、就学準備の一環として、行動意識の為の声かけや出来ることは日常に取り入れるなど、将来のイメージを持って過ごす事の助言をした。3歳9か月に定頸し、寝返りで室内移動が確立。体力がつき発作頻度も減った。質問紙式発達検査では社会性や巧緻性の発達もみられた。生活面では、睡眠時間はまとまり、食卓での食事が出来るなど1日の生活リズムが整うようになった。同時期に、本児との屋外活動の希望が聞かれ始め、4歳頃より感染症対策やリスクを踏まえた社会参加の計画をたてた。その後、4歳9か月までに母と自転車での外出や、スキー場でのレジャー、飛行機での海外旅行を体験した。</p><p>【考察】身体の成長や心肺機能が落ち着いていたことは、積極的なリハが行えた要因であった。寝返り移動獲得や体力の向上が図られた事、生活リズムが整ったことで、体調が安定し、身体的精神的な発達に結びついた。また、開始当初は漠然とした不安要素の方が強かった家族だが、本児の成長を通じて本来の明るさや積極性が発揮され、将来を自分たちで選択していく姿勢に変化したことで、屋外活動に挑戦できたと考える。加えて、将来像を意識しながら悩みに寄り添い、人生目標を明確にできたことは、リスクを踏まえた社会参加を具体化する為に重要であった。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】症例報告を行うにあたり、ヘルシンキ宣言の精神に基づき、口頭・書面にて家族に説明し同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-59_2-J-59_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134990208
  • NII論文ID
    130007694365
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-59_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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