L3不全麻痺二分脊椎児に対する装具療法と理学療法

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  • -18年間の歩行能力と二次障害の経過-

抄録

<p>【はじめに】二分脊椎児においては,成長に伴う体重・活動量増加による腰痛,膝関節・股関節の障害,足部変形による褥瘡等の二次障害と移動機能低下が報告されている.当院においてL3レベルの二分脊椎児に対し,距舟踵・距腿関節の安定を目的としたtotal contact ankle-foot orthosis(以下tc-AFO)による装具療法と理学療法を継続し,成長の過程で二次障害を生じながらも移動機能を維持できた経過を報告する.</p><p>【方法】2〜19才の歩行能力,二次障害,筋力,理学療法介入,AFO作製について後方視的に分析.歩行能の最終評価として,アニマ(株)社製ウォークWayによる歩行解析と6分間歩行テストを実施.</p><p>【症例】19歳男性.生後7か月時に脊髄脂肪腫根治術施行(L2以下の二分脊椎,L2-S1の脂肪腫).L3レベル不全麻痺.Sharrard分類:Ⅲ群.</p><p>歩行能力と二次障害:2歳7ヶ月時に初歩.歩行遊脚相の下垂足,立脚相のtoe-outした外反扁平足あり.2歳時に金属支柱付きAFO作成.内果の発赤繰り返し,3歳からtc-AFOを使用.4歳から12歳までtc-AFO装着にて屋外独歩自立.13歳時,股関節外旋増悪し,屋外ロフストランド杖使用.14歳時,右股関節亜脱臼を認めた.15歳から両ロフストランド杖歩行と車いすを併用.16歳時腰痛あり,係留解除術施行.術後3ヶ月より腰痛消失.</p><p>徒手筋力テスト(右/左):足関節底屈0/0背屈0/0</p><p>3歳:膝関節屈曲3/3伸展3/3股関節屈曲3/3伸展1/1外転2/2</p><p>11歳:膝関節屈曲2/2伸展3/3股関節屈曲3/3伸展2/2外転1/1</p><p>19歳:膝関節屈曲1/1伸展2/3股関節屈曲3/3伸展1/1外転2-/1</p><p>理学療法介入:10ヶ月時より外来にて開始.年齢,成長に応じ,筋の不均衡,変形が姿勢・歩行に及ぼす影響を分析し,下肢・腰部筋のmobilization,ストレッチ,筋力トレーニング,立位・歩行練習を実施,同時に自己管理方法を指導.</p><p>tc-AFOの作製:3歳からtc-AFO(材質:ポリプロピレン(以下PP))を22足作成.PPの厚み(下腿支持部/足底部):3〜6歳3/4mm,7〜10歳4/4mm,11〜12歳5/5mm,13〜19歳6/6mm,)足関節角度:3〜10歳0°,11〜19歳底屈5°.15歳から右股関節亜脱臼による脚長差に対し補高.</p><p>【結果】最終評価(19歳時):ADL自立(Barthel index:100点).移動は車椅子と両ロフストランド杖歩行併用.足底の胼胝形成なし.疼痛なし. 片ロフストランド杖支持立位にてパラスポーツ競技参加.</p><p>関節可動域(°):股関節屈曲130/130,伸展0/0,外転25/20,膝関節屈曲115/125,伸展10/0,足関節背屈10/10,下腿外旋55/40.</p><p>歩行解析(裸足+杖/tc-AFO+杖):ストライド(cm)99.67/115.00,歩幅(cm)50.50/52.67,歩隔(cm)31.63/19.83,スピード(cm/秒)75.08/75.55,ケーデンス(歩)84.20/100.58.6分間歩行:400m.</p><p>【結論】L3レベルの麻痺でありながら,足関節の安定を図るtc-AFO装着と理学療法の継続により,12歳まで独歩を継続できた.その後成長に伴う亜脱臼,腰痛の増悪により杖歩行となったが,実用的な歩行とパラスポーツ競技参加を継続できた.変形を予防する観点からは早期からの長下肢装具の適応も考えられた症例であり,装具および理学療法の内容について今後の検討が必要である.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づいて,対象児,保護者に経過を発表する機会を持つことについて説明し書面にて同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-79_1-J-79_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134994688
  • NII論文ID
    130007694317
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-79_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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