膝関節痛の増悪なく減量に成功した高度肥満症患者の1症例
抄録
<p>【背景および目的】肥満患者は運動器、心肺機能に合併症を有することが多く、運動療法においては個々に合わせた運動の種類を選択しなければならない。今回、膝関節痛を有する高度肥満症患者への非荷重運動と食事療法が減量に奏功したため報告する。</p><p> </p><p>【症例】46歳男性。高校時代140㎏、その後徐々に体重増加し呼吸苦出現。減量および心房細動治療目的に入院となる。冠危険因子は糖尿病、高血圧。喫煙歴は20歳から40歳まで1日20本。入院時の体重194kg、BMI66.7、血圧130/70mmHg、脈拍136bpm、HbA1c6.9%、T-Cho162mg/dl、HDL45㎎/dl、LDL100㎎/dl。職業は営業職。</p><p> </p><p>【結果】運動療法を週5日、3週間実施した。内容は入院時より両膝に荷重時痛をみとめたため、非荷重運動としてベルト電極式骨格筋電気刺激(B-SES)、上肢マシントレーニング、20分の車いす駆動を選択した。運動強度は自覚症状、脈拍数安静時+20bpm、低血糖症状を確認して調節した。食事療法は1日塩分5g、1400kcalの食事制限。3週後には15㎏の減量、6分間歩行総距離は183mから297m、連続歩行距離は83mから187mに改善がみられた。体組成は筋肉量が60.5㎏から61.1㎏、体脂肪率が67.1%から64.7%と筋肉量を減少させることなく、脂肪量減少に成功した。入院中の歩数は入院後1週間で1日平均2070歩、退院前1週間で2400歩であった。退院後は外来に通院し運動習慣、体重および食事量の確認を継続している。</p><p> </p><p>【考察および結論】肥満症診療ガイドライン2016ではBMI35以上の肥満を「高度肥満症」と分類し、減量治療目標を5~10%と設定している。本症例は3週間の運動療法、減塩、カロリー制限により8%の体重減少、歩行距離延長に成功した。膝関節痛、運動耐容能低下により歩行距離漸増に難渋したが、上肢中心の運動を励行したことで、運動量を確保できた。有酸素運動と上肢レジスタンストレーニングの併用が筋肉量を維持した体重減少に寄与すると思われる。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、本症例には発表およびプライバシーの配慮について、十分に説明し、書面にて同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), A-122_2-A-122_2, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763135196416
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- NII論文ID
- 130007692445
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可