慢性閉塞性肺疾患患者の急性増悪後における最大吸気・呼気鼻腔内圧に関する検討
説明
<p>【背景・目的】瞬時に鼻を啜る時に生じる最大吸気鼻腔内圧(SNIP)は,簡便で患者への負荷が小さい吸気筋力評価である.また,我々は瞬時に鼻をかむ動作(reverse sniff)時の最大呼気鼻腔内圧(RSNEP)が,呼気筋力評価になることを健常者で検証した(Ichikawa T, 2015).今回,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の急性増悪後のSNIPとRSNEPについて,理学療法(PT)介入前後の変化と,従来の呼吸筋力評価である最大吸気・呼気口腔内圧(MIP・MEP)および換気機能との関連性を検討した.</p><p> </p><p>【方法または症例】対象はCOPD急性増悪で入院し,薬物・酸素療法およびPTを行った患者25例(男性19例,年齢77±6歳,入院日数27±19日)とした.評価時期はPT開始後7日以内(開始時)と退院時とし,SNIP,RSNEP,MIP,MEP,換気機能として努力性肺活量(FVC)および気流閉塞指標の対標準1秒量(%FEV1)を評価した.統計解析は,各指標の変化にpaired t検定,各指標間の関連性にPearson積率相関係数を用いた(有意水準5%未満).</p><p> </p><p>【結果】PT介入前後の変化では,SNIP(開始時:43±20 vs 退院時:50±16 cmH2O),RSNEP(35±21 vs 46±25),MIP(45±18 vs 57±22),MEP(69±32 vs 84±34),FVC(1.94±0.58 vs 2.12±0.61 L),%FEV1(42±14 vs 47±15%)のすべてが改善した.また,SNIPとMIP(開始時:r=0.63,退院時:r=0.74),RSNEPとMEP(開始時:r=0.44,退院時:r=0.45)の間に正の相関を認めた.SNIP,RSNEP,MIPおよびMEPは,FVCとの間にそれぞれ正の相関(開始時:r=0.57~0.67,退院時:r=0.51~0.81)を認めたが,%FEV1はいずれの指標とも相関を認めなかった.</p><p> </p><p>【考察および結論】SNIPおよびRSNEPは,MIPおよびMEPと同様にCOPD急性増悪後の呼吸筋力の回復を示す指標になると考えられた.ただし,RSNEPは,SNIPとMIPの関係と異なり,MEPと高い相関関係に至らなかったことから,MEPとは異なる圧発生の要素を含んだ指標である可能性が考えられた.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,東海大学医学部臨床研究審査委員会の承認を得て実施した(受付番号:15R-149).すべての研究対象者に対しては,本委員会にて承認を得た同意説明文書の内容に則って,本研究の内容やプライバシーの保護,研究への協力は自由意志で決定できることなどを十分に説明したうえで,臨床研究への協力の同意を書面にて得た.また,研究対象者の個人情報およびデータの秘密保護に十分配慮した.</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), A-39_2-A-39_2, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763135199360
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- NII論文ID
- 130007692475
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可