健常中高齢者の呼吸機能と咳嗽力について

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抄録

<p>【目的】</p><p> 高齢者の死因として肺炎は大きな割合を占めており、咳嗽力の低下も原因の1つとされている。気道分泌物除去を目的とした有効的な咳嗽は、気道クリアアランスの面からも重要な機能である。咳嗽力の評価として咳の最大流量Cough Peak Flow (CPF) が良い指標になるとされているが、健常中高齢者の報告は少ない。そこで今回、健常中高齢者の咳嗽力と呼吸機能について調べ、また咳嗽力と呼吸機能との関係について調査したので報告する。</p><p>【方法】</p><p> 対象者は喫煙歴がなく、日常生活活動が自立している健常中高年者23名(女性17名、男性6名、年齢71.1±6.4歳、身長158.3±4.8㎝、体重60.5±7.4kg)を対象とした。測定項目として身長・体重・Body Mass Index(BMI)・肺活量・1秒量・CPFを計測した。肺活量・1秒量の測定にはCHEST社製電子スパイロメーターHI-801を用いた。CPFの測定にはフジ・レスピロニクス社製アセスピークフローを使用した。測定姿勢は背もたれのない座位とし、各3回行い最大値を採用した。各測定間には十分な休憩を入れ、疲労がないことを確認した。統計学的処理として、CPFと各項目との関係はPearsonの相関分析を行なった。有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p> CPFの平均値は280.5±66.3L/minであった。CPFと肺活量との間には有意な正の相関(r=0.67)を認め、年齢との間には有意な負の相関(r=-0.62)を認めた。その他のパラメータとは有意な相関は認められなかった。</p><p>【考察および結論】</p><p> 今回計測したCPF平均値は効果的な咳嗽力を維持するために必要とされている270L/minを上回っていたが、下回っているものもいた。中高齢者のCPFは肺活量と相関を認めたことから咳嗽力には咳嗽の第1相である深吸気が影響していることが考えられた。また年齢と負の相関を認めたことから、加齢による変化を生じうる可能性が示唆され、高齢になるにつれて胸郭が固くなることが知られていることから、今後は胸郭柔軟性についても検討していく必要性があると思われる。また上述の通り、効果的な咳嗽において必要とされている値を下回っているものもいることから、健康増進においても健常中高年者に対して咳嗽力を向上あるいは維持させるプログラムも検討する必要性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は大学倫理委員会の承認を得ており、実験に先立ち、全被験者に実験内容を口頭および書面にて十分に説明し、実験参加の同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-115_1-C-115_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135214464
  • NII論文ID
    130007692667
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-115_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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