脳卒中片麻痺患者における非麻痺側への上側方Functional Reach Testの検討

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抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>皮質網様体路は両側性または同側性に予測的姿勢制御に関与し、麻痺側だけでなく、非麻痺側への影響も考えられる。そこで本研究は、非麻痺側方向への上側方Functional Reach Test(以下FRT)を実施し、非麻痺側の姿勢制御機能について定量的に評価し、考察する。</p><p>【方法】</p><p>対象は健常者11名と脳卒中片麻痺患者(以下CVA患者)4名。健常者は男性7名、女性4名、年齢31±6.4歳、身長168.9±8.0㎝。CVA患者は初発右被殻出血男性2名、女性2名。症例1は発症148病日、身長160㎝、Brunnstrom Stage(以下BRS)左下肢Ⅴ、Functional Ambulation Classification(以下FAC)3。症例2は発症143病日、身長171㎝、BRS左下肢Ⅲ、FAC3。症例3は発症77病日、身長172㎝、BRS左下肢Ⅲ、FAC2。症例4は発症137病日、身長153㎝、BRS左下肢Ⅲ、FAC4。CVA患者4名共にCT脳画像より皮質網様体路に損傷を認めた。非麻痺側の上側方FRTについて、開始肢位を静止立位とし、上肢外転135度方向へ最大リーチ、その後スムーズに開始肢位へ戻り、リーチ距離と側方重心移動量、下肢・体幹角度を計測した。計測は3回行い最大値を採用した。リーチ距離の計測は伸縮棒を用いリーチに伴う伸縮棒の変化量を計測し、リーチ距離を身長で除した。重心移動量はPanasonicデジタルミラーを使用し、矩形動揺面積の側方成分を計測。下肢・体幹角度は最大リーチ位の静止画を画像解析ソフトImagJで計測。下肢に対する体幹の角度(第7頸椎-第5腰椎棘突起-両足部中間)を計測し、リーチ方向への体幹の傾きを+角度、リーチ反対方向への体幹傾きを-角度で表した。</p><p>【結果】</p><p>健常者はリーチ距離/身長0.84±0.11㎜、側方重心移動距離134±40㎜、下肢・体幹角度+0.3±2.0度。症例1はリーチ距離/身長0.34㎜、側方重心移動距離104㎜、下肢・体幹角度-19度。症例2はリーチ距離/身長0.29㎜、側方重心移動距離134㎜、下肢・体幹角度-2度。症例3はリーチ距離/身長0.38㎜、側方重心移動距離114㎜、下肢・体幹角度-10度。症例4はリーチ距離/身長0.07㎜、側方重心移動距離96㎜、下肢・体幹角度-12度であった。</p><p>【考察】</p><p>健常者とCVA患者に対し、上側方FRTを実施したところ4症例共、健常者に比べ上側方リーチ距離の短縮を認めた。また健常者はリーチや重心移動に伴う体幹の傾きはほぼ認められなかったものの、CVA患者では、重心移動は認めるもののリーチと反対側への体幹の傾きを認めた。以上の結果からCVA患者4名は麻痺側だけでなく非麻痺側における姿勢制御にも問題があり、リーチ距離の短縮とリーチ反対側への代償的な体幹傾斜に繋がったと考える。このことは、同側性下行路である皮質網様体路の障害が一要因として示唆される。そのため、CVA患者において、皮質網様体路損傷による非麻痺側への影響も考慮し、評価、治療を行う必要がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は対象者に十分な説明を行い同意を得た。また当院倫理委員会に承諾を受け実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-125_1-E-125_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135239168
  • NII論文ID
    130007692954
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-125_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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