最大強制吸気トレーニングにより肺活量維持に寄与したM-蛋白血症を伴う孤発性成人発症型ネマリンミオパチーの一例

DOI

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p> 孤発性成人発症型ネマリンミオパチー(SLOMN)は,先天性ミオパチーの代表疾患であるネマリンミオパチーの一病型で,亜急性の四肢筋力低下で発症し,首下がりや嚥下障害などを来す進行性疾患である.特にM-蛋白血症(MGUS)の合併例であるSLOMN-MGUSは予後不良で,呼吸不全による死亡が報告されている.メルファラン大量療法後の自家末梢血幹細胞移植(自家移植)の有効性を示唆する報告がされているものの,確立された治療法はなく,リハビリテーション介入の効果に言及した報告はない.</p><p> 今回,呼吸機能の維持を目的にmechanical insufflation-exsufflation(MI-E)を用いた最大強制吸気(Maximum Insufflation Capacity:MIC)トレーニングを開始し,その後の肺活量(VC)を維持した状態で自家移植を行うことができたSLOMN-MGUSの一症例を経験したため報告する.</p><p>【症例紹介】</p><p>35歳,女性.X-1年8月,両上肢脱力が生じ結髪動作の困難さを自覚した.X年4月,階段昇降や立ち上がりが辛くなり,両下肢の筋力低下が進行した.X年5月,精査目的に当院神経内科へ入院し,SLONM-MGUSと診断された.初期評価時のVCは2.53L,筋力は頸部体幹・上下肢近位でMMT2と低下していた.歩行は大殿筋歩行が著明であったが独歩で自立していた.</p><p>【経過】</p><p>X年6月より免疫グロブリン静注療法(免疫療法),7月よりボルテゾミブ+デキサメタゾン療法(化学療法)が施行されたが,症状の明らかな改善なく,筋力低下は進行した.呼吸機能の低下は,自家移植に影響する因子と考えられ,X年8月初旬よりVCを維持する目的でMI-E(フィリップス・レスピロニクス合同会社製のカフアシストE70)を用いたMICトレーニングを開始した.訓練は,MI-Eの自動モード,吸気圧15-20cmH₂O で2秒間の吸気を2回,最大吸気位での息こらえ2秒間の実施を1クールとした.最大吸気位の指標は胸郭挙上の確認と本人の自覚とし,1回の介入で計5クール実施した.頻度は,外来で週2回の計6回実施した.その結果,歩行能力はTimed Up & Go Testで9.0秒(X年5月25)→11.5秒(X年8月17日),6分間歩行で390m(X年5月25日)→355m(X年9月4日)と低下を認めたが,VCは2.53L(X年3月30日)→2.22L(X年6月9日)→2.03L(X年7月10日)→2.30L(X年8月28日)と8月初旬からの訓練導入後は低下なく経過し,その後X年9月に自家移植に至った.</p><p>【考察】</p><p>本症例では,免疫療法・化学療法で明らかな改善なく,短期間に筋力低下が進行して歩行能力や呼吸機能が低下したにも関わらず,呼吸機能を維持する目的で開始したMICトレーニングによって,自家移植までVCを維持しえた.これは,MICトレーニングよる肺コンプライアンスの維持・改善がVC維持に関与したためと考えられた.進行性の筋疾患による二次的な呼吸機能障害を有する症例に対しては,呼吸機能の維持や低下の遅延を図る手段として,MICトレーニングが治療選択肢の一つとなり得ることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者に説明し、同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-156_1-E-156_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135247232
  • NII論文ID
    130007692985
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-156_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ