急性期病院から自宅退院する軽症脳梗塞患者における退院前後での身体活動量の比較
抄録
<p>【はじめに・目的】</p><p>軽症脳梗塞患者は、早期に日常生活動作が自立するため、入院期間は短期間となり急性期病院のみの関わりになることがほとんどである。一方、脳梗塞は年齢の上昇に伴い再発率は高くなり、再発予防に対する取り組みが重要視されている中で、身体活動量(PA)と再発率との間に関連性が報告されている。そのため、入院期間中に軽症脳梗塞患者に対して運動指導を行う理学療法(PT)は、再発予防において重要な役割を担っている。しかし、軽症脳梗塞患者の入院期間におけるPAは低いことが報告され、さらに自宅退院後のPAの推移については不明確であるのが現状である。本研究の目的は、急性期病院入院中にPTを実施し自宅退院した軽症脳梗塞患者に対し、入院期間と退院後のPAの変化量について調査することである。</p><p>【方法】</p><p>対象は2017年9月から12月に急性期病院に入院し、PT開始から1週間以内に病棟内歩行が自立した脳梗塞患者とした。除外基準として、活動量計を継続して装着できない者、退院後に通院できない者とした。同意を得られた後から退院までの入院期間中のPAを評価し、退院から退院後2週間のPAを評価した。PAは活動量計(TANITA社製カロリズムエキスパート)を用いて評価した。入院期間のPAは退院日直近の3日間の平均値、退院後のPAは外来評価日直近の3日間の平均値とした。解析方法は、各項目の基本統計量を算出し、入院期間と退院後のPAの変化量は退院後PAと入院期間PAの平均値の差を算出し、PAの推移について検討を行った。</p><p>【結果】</p><p>対象は選択基準を満たす17例であった。内訳として、年齢(平均±標準偏差)は66±12.2歳であり、性別は男性11例、女性6例、脳梗塞の病型分類ではアテローム血栓性9例、心原性2例、ラクナ3例、その他3例、BIは99±1.7点、TUGは7.5±2.0秒であった。入院期間のPAは6683±5020歩、退院後のPAは5384±3706歩であった。PAの変化量(退院後-入院期間PA)は-1299±3283歩であり、入院期間と比べ退院後のPAが向上した症例は6例、低下した症例は11例であった。</p><p>【考察】</p><p>軽症脳梗塞患者に対して運動指導を入院中から行っているが、半数以上の症例は退院後のPAが低下している結果であった。軽症脳梗塞患者は退院後の後遺症はほとんどなく、入院前の生活へ速やかに戻ることからも、入院期間の運動指導のみでは退院後のPA維持・向上には不十分であり、患者個々の再発予防に対する認識について考慮すべきであると考えた。そのため、急性期病院入院期間中のPTはPAの評価に加え、軽症脳梗塞患者個々の運動に対する認識の評価として行動変容に合せた運動方法・量の指導や知識面の補助等を行っていく必要があり、自宅退院後の地域との連携による支援を行っていく必要があると考えた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,埼玉医科大学総合医療センターの倫理委員会の承認(承認番号1719)を得て実施した.対象者には,研究の目的や方法等の内容を書面により説明し,同意書に署名を得て実施した.</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), E-58_1-E-58_1, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763135256576
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- NII論文ID
- 130007693174
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可