通所リハビリテーション利用者における長期的な運動療法の効果判定方法の検討,および分析について

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抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>通所リハビリテーション(以下:通所リハ)では,理学療法士の指導のもと,生活期の利用者に運動療法を行い,定期的に体力測定を行っている.A施設では3ヶ月に一度定期的に体力測定を行い,身体機能の維持・向上を目的に運動メニューの見直しや利用者への意欲向上につなげている.測定項目は,体組成,筋力,バランス能力,敏捷性,スピード,持久力である.しかしこれまで,長期にわたって定期的に測定された利用者の身体機能測定を通した運動療法の効果について調査した研究はない.そこで今回の研究の目的は,通所リハで定期的に行われている身体機能評価を通して運動療法の効果判定方法を検討すること,またその効果が各測定項目でどのように変化しているかを分析することとした.</p><p>【方法】</p><p>対象はA施設を12ヶ月以上利用している要介護者37名 (男性26名,女性11名,年齢72.5±11.1歳,利用月数平均32.7±14.7月,要介護1:19名,要介護2:9名,要介護3:5名,要介護4:2名,要介護5:2名) とした.利用開始当初から平成30年5月までに計測した3ヶ月に一度の,体脂肪率,握力,片脚立位,Timed up and Go test(以下:TUG),ステッピングテスト,5回立ち上がり,10m歩行最大速度,3分間歩行距離の測定値を使用した.それぞれを時系列でプロットし,近似直線を描き,その傾きを運動療法の効果とした.各測定項目の傾きから利用者の特性を分類するために年齢,利用月数,各測定項目を変数として階層クラスタ分析を行った.また,介護度別の改善者率を,各測定項目の傾きがプラスかマイナスによって改善者群と悪化者群の2群に分け検討した.</p><p>【結果】</p><p>階層クラスタ分析において分類はされなかった.要介護1と2の利用者ではステッピングテスト,5回立ち上がりにおいて改善者率が高くなった.要介護1の利用者では10m歩行において改善者率が高くなった.要介護2の利用者では3分間歩行距離において改善者率が高くなった.他の項目では比率は大きく変わらなかった.要介護3から5の利用者は母数が少なかったが,要介護3の利用者は,握力,TUG,5回立ち上がり,10m歩行において悪化者率が高くなった.要介護5の利用者では片脚立位以外すべての悪化者率が高くなった.</p><p>【結論】</p><p>今回,定期的に測定された生活期通所リハ利用者の各計測値の近似直線の傾きを効果判定の基準とし検討した.クラスタ分析において分類がされなかったことから,運動療法の効果は年齢や利用月数,各測定項目と類似性を持たず,個別性が高いことが示唆された.また,介護度別の分析においては介護度が低いと改善者率が高い項目が多く,介護度が低いと改善が困難な項目が多くなった.今後,このような分析を通して各利用者に合わせた運動療法の目標設定,内容検討が可能になると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者には研究開始前に本研究の内容と趣旨を十分に説明し,書面・口頭にて同意を得た.A施設は倫理委員会は存在しなかったため,所属長の許可をとり口頭にて承認を得た.また,ヘルシンキ宣言に準じ,利用者の人格・権利と守秘義務に十分配慮して実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), G-81_2-G-81_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135277952
  • NII論文ID
    130007693437
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.g-81_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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