骨折治癒を促進する至適な超音波強度の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>わが国では、急速な高齢化に伴い、骨折患者の数は年々増加しており、臨床現場でも理学療法の対象になることが多い。骨折に対する超音波療法は、0.1W/cm2未満の低出力超音波(LIPUS)が既に臨床応用されている。しかしながら、近年、LIPUSの効果を否定するシステマティックレビュー・メタアナリシスが報告されており、既存の超音波療法を再度見直す必要性があると考えられる。そこで、私たちは、細胞は生理的範囲内で強い物理的刺激を加えると増殖するという報告から、超音波の強度を上げることでより効果的な治癒が得られるという着想を得た。そこで、本研究では、LIPUSを再現する強度の超音波と、LIPUSよりも高強度の超音波を用いて、ラットの骨折治癒を促進する適切な超音波の強度を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>合計16匹のWistar系雄性リタイアラットの両側大腿骨骨幹部に、電動ドリルを用いて直径1.2mmの骨欠損を作製した。ラットを、通常飼育する対照群と異なる強度の超音波治療を行う3つの治療群(0.05W/cm2、0.5W/cm2、1.0W/cm2)の計4群に無作為に4匹ずつ分け、治療を14日間(20分/日)行った。実験期間終了後、大腿骨を採取し、μCT撮影を行い、その後凍結包埋したサンプルから非脱灰未固定切片を作製した。μCT撮影によって得られたスライス画像から、解析ソフト(RATOC社製)を用いて骨欠損の治癒過程の進行度を評価した。また、骨芽細胞と破骨細胞の局在を把握するために、それぞれアルカリ性フォスファターゼ染色と酒石酸抵抗性フォスファターゼ染色を行った。統計学的解析には、JMP7(SAS社製)を用いて、一元配置分散分析とTurkey法による多重比較検定を行った。</p><p>【結果】</p><p>骨欠損作製14日後の欠損領域の骨量体積比は0.5W/cm2の強度の超音波を照射した群で対照群よりも有意に高かった(p<0.01)。また、骨構造評価指標であるSMIも有意に減少しており(p<0.01)、理想的な板状の構造に近づいていた。1.0W/cm2の強度の超音波を照射した群でも同様の結果が得られた(p<0.05)。一方で、骨芽細胞の活性と破骨細胞の活性は、すべての群において有意な差は認められなかった。さらに、骨折が形態学的のみではなく、力学的にも回復しているか評価するための三点曲げ試験と、形態学的に良好な治癒が得られた強度の超音波による早期の治癒過程(骨欠損作製後3日間と7日間)の分析を現在進めており、学会で報告したい。</p><p>【結論】</p><p>現時点で結果の得られている評価において、0.5W/cm2と1.0W/cm2の強度の超音波が骨形成を促進することが明らかになった。一方で、0.05W/cm2の強度の超音波を照射した群では、対照群と有意な差は認められなかった。骨折治癒において、今回検討した強度では、0.5W/cm2が最も至適であり、LIPUSだけでなく、従来理学療法士が治療で用いている0.5W/cm2や1.0W/cm2の強度の超音波でも骨折治癒を促進できる可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本実験は神戸大学動物実験委員からの承認を得た(承認番号:160607)。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-1_2-H2-1_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135303680
  • NII論文ID
    130007693726
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-1_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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