胸郭形状の非対称性の強さと胸郭側方偏位の関係

DOI
  • 荒牧 隼浩
    IMS(イムス)グループ 板橋中央総合病院 東京医科大学大学院 医学研究科
  • 本間 友貴
    IMS(イムス)グループ クローバーのさと イムスケアカウピリ
  • 真水 鉄也
    戸田中央リハクリニック
  • 柿崎 藤泰
    文京学院大学大学院 保健医療科学研究科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>我々は, 胸郭形状の非対称性の存在が, 運動機能と密接な関係があることを見出し, 非対称性の強さが各分節の機能悪化につながることを提言してきた. これらの事象に加え, 我々は胸郭形状に非対称性が形成されるメカニズムの解明を進めており, その一要因として胸郭の側方偏位を呈した体幹姿勢が強く影響していると考えている.</p><p> そこで本研究は, 胸郭形状の非対称性と胸郭の側方偏位との関係性を検討することを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>対象は健常成人男性16名 (平均年齢23.8±3.0歳). 測定肢位は骨盤傾斜角0度の座位とした. 胸郭形状の測定は体積変化を用いて, 3次元動作解析装置 (VICON-MX, VICON社)と呼気ガス分析装置 (AS-300, ミナト医科学社) を使用し, それぞれの機器を同期させ実施した. 赤外線マーカー貼付位置は胸骨切痕レベル, 第3胸肋関節レベル, 剣状突起レベル, 第8肋骨レベルとした. 各レベルの基準点として, 前・背面の前額面上における正中線上に赤外線マーカーを貼付し, 次に基準点の左右水平線上に各3点貼付した. また, 両側のASIAとPSISに貼付し, 計60点の赤外線マーカーを算出した. 今回は, 上位胸郭の前面 (UF)と背面 (UB), 中位胸郭の前面 (MF)と背面 (MB), 下位胸郭の前面 (LF)と背面 (LB)の6エリアに分類し胸郭形状を算出した. 胸郭形状の非対称性を左右比にて求め, 右側データを左側データで除した値とした. また, 胸郭中心を剣状突起レベルの前・背面の基準点を結んだ直線の中点とし, 骨盤中心を両側のASIAとPSISマーカーを使用し算出した。胸郭中心と骨盤中心の前額面上における差を胸郭側方偏位量として定義した. 統計学的解析は, 各エリアにおける胸郭形状の左右比を平均値と95%信頼区間 (95%CI)にて算出した. また胸郭形状の左右比と胸郭側方偏位量との関係性をPearsonの積率相関係数用いて検討した. なお, 解析には統計ソフトウェアSPSS (IBM社製)を使用し, 有意水準はそれぞれ5%未満とした</p><p>【結果】</p><p>胸郭形状左右比を算出した結果, UFは0.98±0.03 (95%CI:0.96-0.99), UBは0.99±0.04 (95%CI:0.97-1.00), MFは1.03±0.02 (95%CI:1.02-1.04), MB は1.03±0.02 (95%CI:1.02-1.04), LFは1.07±0.04 (95%CL:1.06-1.09), LBは1.06±0.04 (95%CL:1.04-1.08)となった. 胸郭側方偏位量は-5.9±4.8 mm(右偏位群2例, 左偏位群14例)であった. また, 胸郭形状左右比との関係性においては, UFは正の相関を示し (r=0.64), LFとLBは負の相関が示された (r=-0.62, r=-0.57).</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>本研究にて, 被験者の約90%もの割合にて胸郭が左側方偏位を呈していることが確認できた. また, 側方偏位が強い例ほど, 胸郭形状の非対称性も強いことがわかった. 胸郭内には上半身質量中心が存在していることから, 胸郭の形状や運動パターンは身体重心位置の決定に影響を与えることが予測され, 互いの関係性は強いものだと考える. つまり, 本研究にて解明されたメカニズムから, 胸郭偏位を正中方向へ導く理学療法の展開により, 各分節の機能悪化に影響する胸郭形状の非対称性を緩和できると示唆される.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は文京学院大学大学院の倫理審査委員会の承認を得て実施した.ヘルシンキ宣言に基づき, 対象者に対して本研究内容の趣旨を十分に説明し, 本人の承認を得た後に測定した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-207_1-H2-207_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135305728
  • NII論文ID
    130007693759
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-207_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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