中枢性感作評価である時間的加重とCentral Sensitization Inventoryの関係性および臨床症状との関連

説明

<p>【はじめに,目的】</p><p>中枢性感作(Central Sensitization: CS)は,線維筋痛症や変形性関節症,慢性腰痛などの慢性痛やがん性疼痛の病態の一つであることが示唆されており,時間的加重(Temporal Summation: TS)はCSの直接的評価として用いられている。また,CSが関与する包括的な疾患概念として中枢性感作症候群(Central Sensitivity Syndrome: CSS)が提唱されており,CSおよびCSSのスクリーニングツールとしてCentral Sensitization Inventory (CSI)が開発され,臨床的有用性が報告されている。我々はこれまでにCSIと臨床症状が関連することを報告しているが,CSの直接的評価であるTSと間接的評価であるCSIの関係性は明らかとなっていない。今回,TSとCSIの関係性および臨床症状との関連を検討した。</p><p>【方法】</p><p>外来受診患者265名(男性77名,女性188名,平均年齢54.4±13.7歳,線維筋痛症25名,乳がん22名,頚部疾患51名,腰部疾患71名,膝疾患35名,その他61名)を対象に,CSI,TS,健康関連QOL(EuroQol 5-Dimension: EQ5D),疼痛(Brief Pain Inventory: BPI),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale: PCS)を評価した。TS評価では,圧痛閾値での圧力刺激を10回反復し,1回目と10回目の疼痛強度(Numeric Rating Scale: NRS)の差をTSとした。CSIおよびTSはそれぞれ中央値にて2分割し,その関係性で4群に群分けした(①TS High/CSI High群(TH/CH群),②TS High/CSI Low群(TH/CL群),③TS Low/CSI High群(TL/CH群),④TS Low/CSI Low群(TL/CL群))。4群でのEQ5D,BPI(Pain intensity, Pain interference),PCSの比較をKruskal-Wallis検定およびMann-WhitneyのU検定を用いて比較検討した。なお,統計学的有意水準はBonferroni補正を行い0.8%とした。</p><p>【結果】</p><p>TSの中央値は2(0-8),CSIの中央値は20点(0-83点)であった。患者分布はTH/CH群に74名(27.9%),TH/CL群に60名(22.6%),TL/CH群に63名(23.8%),TL/CL群に68名(25.7%)であった。TH/CH群およびTL/CH群は,TH/CL群およびTL/CL群に比べてEQ5Dが有意に低く,BPI,PCSは有意に高かった。TH/CH群とTL/CH群,およびTH/CL群とTL/CL群ではEQ5D,BPI,PCSに有意な差は認めなかった。</p><p>【結論】</p><p>健康関連QOL,疼痛および痛みについての破局的思考について,TL/CH群とTH/CL群の間に有意差が認められたことより,2つの評価はCSの異なった側面を評価している可能性が示唆された。また,TSが高かろうが低かろうが臨床症状に差がなかったことから,TSよりもCSIの方が臨床症状を包括的に反映している可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は甲南女子大学倫理委員会の承認を得て実施した。事前に研究目的と方法を十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-251_2-H2-251_2, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135312128
  • NII論文ID
    130007693818
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-251_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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