背臥位と中腰位における腟圧および体幹筋活動の違い

DOI

抄録

<p>【目的】</p><p>腹圧性尿失禁(SUI)は,腹圧の上昇により膀胱内圧が尿道閉鎖圧を上回ることで生じる.尿禁制は,骨盤底の支持構造による尿道の圧迫により維持される.近年,尿道圧迫に関与する能動的な支持は,骨盤底筋(PMF)の収縮に加え,内腹斜筋などの体幹深層筋の共同収縮が重要であるとされる.しかし既報では,背臥位や座位での検討であり,腹圧が上昇する肢位での報告は少ない.本研究の目的は,背臥位と中腰位でのPFM筋力と体幹筋における筋活動の違いについて検討することである.</p><p>【方法】</p><p> 対象は健常成人女性15名(年齢25.0歳,BMI 20.9(中央値))とした.測定肢位は背臥位,立位,中腰位,重錘位の4肢位とし,背臥位,中腰位,重錘位は膝45°屈曲位とした.重錘位の重錘負荷量は,厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針及び解説」に従い設定した.運動課題は,安静時と3秒間のPFM最大随意収縮(収縮時)とした.PFM筋力の指標として,安静時と収縮時の腟圧を腟圧計(MizCure,OWOMED社)を用い,右側の内腹斜筋(IO),外腹斜筋(EO),多裂筋(MF)の筋活動を表面筋電計(Tele Myo G2,Noraxon社)を用いて測定した.腟圧値と筋活動量は安静時と収縮時における最大値を各々2回測定し,平均値を採用した.被験筋の筋活動量は,安静時と収縮時の腟圧最大値における筋活動前後0.5秒の積分筋電値を徒手筋力検査法段階5での筋電値で正規化した(%IEMG).統計学的解析は,各肢位での安静時と収縮時の腟圧値と%IEMGについて,安静時・収縮時要因での比較,および肢位要因での比較を二元配置分散分析と多重比較法を用いて検討し,有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p> 腟圧値の比較では, 安静時・収縮時要因と肢位要因の間に交互作用を認めた.安静時・収縮時要因の比較では,各肢位で収縮時が安静時よりも高値を示し,肢位要因の比較では,収縮時,安静時ともに中腰位と重錘位が背臥位と立位よりも高値を示した.%IEMGの比較では,交互作用を認めず,安静時・収縮時要因と肢位要因の各々で有意差を認めた.肢位要因の比較では, IOの重錘位が立位よりも,中腰位が立位と背臥位よりも高値を示した.EOの重錘位が背臥位よりも,MFは重錘位,中腰位,立位,背臥位の順で高値を示した.また,安静時・収縮時要因の比較では,IOにおける安静時(背臥位6.5±6.2%,立位10.5±5.5%,中腰位23.0±16.4%,重錘位32.9±22.3%)と収縮時(背臥位36.6±56.2%,立位33.0±23.5%,中腰位56.2±45.0%,重錘位45.7±33.6%)の差が大きかった.</p><p>【結論】</p><p> 腟圧値の結果から,腹圧が上昇する中腰位,重錘位では,安静時及び収縮時ともに腟圧が高まることが明らかとなった. %IEMGは,全ての筋で各肢位の収縮時に高値を示した.なかでもIOはPFM収縮時の筋活動が高く,安静時との差が大きいことから,共同収縮筋として重要となる可能性が考えられる.以上より,腟圧は腹圧が上昇する中腰位, 重錘位で高まり,腟圧を高める共同収縮筋として体幹深層筋のIOが重要となる可能性が示唆された.なお,本研究はH28年度理学療法にかかわる研究助成を受けた(H28-B16).</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,北海道千歳リハビリテーション大学倫理委員会の承認の下,実施した (承認番号2017-01).</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-91_1-H2-91_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135334272
  • NII論文ID
    130007694038
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-91_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ