上肢の挙上と下制における肩甲骨運動と肩甲骨周囲筋の周波数特性

DOI
  • 梅原 潤
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 日本学術振興会特別研究員DC
  • 八木 優英
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
  • 廣野 哲也
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
  • 上田 泰之
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 信原病院リハビリテーション科
  • 宮腰 晃輔
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
  • 駒村 智史
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
  • 市橋 則明
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

抄録

<p>【はじめに、目的】肩関節疾患患者において肩甲骨異常運動は頻繁に生じ、それは上肢の挙上運動時より下制運動時に認められやすい。したがって、挙上と下制における肩甲骨運動の差異とその誘因に着目することは重要である。これまでこの肩甲骨運動の差異に対して、肩甲骨周囲筋の筋活動量の違いが調べられてきた。だが筋収縮様式は挙上では短縮性収縮、下制では伸張性収縮であることを考慮すると、収縮様式により変化する可能性がある運動単位の活動を検討することは興味深い。運動単位の活動を間接的に評価する方法として、筋電図の周波数解析がある。本研究の目的は、上肢の挙上と下制における肩甲骨運動と肩甲骨周囲筋の周波数特性を明らかにすることとした。</p><p>【方法】対象は健常成人男性18名とし、立位にて前額面での挙上と下制(内転・外転運動)を実施した。運動速度は4秒で最大挙上、4秒で下制するものと規定した。電磁気式動作解析装置および表面筋電図を用いて、挙上と下制における肩甲骨運動と肩甲骨周囲筋の筋活動を計測した。対象筋は僧帽筋上部線維(UT)・中部線維(MT)・下部線維(LT)、前鋸筋(SA)とした。筋電位信号の振幅(%MVC)は最大随意収縮時の振幅で正規化した。また周波数解析として連続ウェーブレット変換を行い、瞬間平均周波数(IMNF)を算出した。肩甲骨運動はオイラー角を用いて内外旋、上下方回旋、前後傾として表した。肩甲骨運動と%MVC、IMNFに関して、挙上と下制の各フェーズの上腕角度30 – 120°の範囲における10°ごとの値を解析に利用した。統計学的解析にはフェーズと上腕角度を2要因とする反復測定分散分析を用いて、交互作用が認められた場合には事後検定として対応のあるt検定もしくはWilcoxonの符号付順位検定を行った。有意水準は5%とした。</p><p>【結果】肩甲骨運動に関して、挙上時と比較し下制30 – 70°において内旋が減少し、下制90 – 120°において後傾が増加した。筋電位振幅に関して、UT、MT、SAではすべての角度、LTでは90 – 120°において%MVCが挙上時と比較し下制時に低値を示した。周波数解析に関して、UTとSAでは30 – 70°、LTでは90 – 120°においてIMNFが挙上時と比較し下制時に高値を示した。またMTでは、すべての角度においてフェーズによるIMNFの違いは認められなかった。</p><p>【考察】肩甲骨運動の変化と肩甲骨周囲筋のIMNFの高周波化は下制時の類似した上腕角度で生じた。筋の伸張性収縮では運動単位の動員順序が変化することが報告されている。本研究で下制時に認められたIMNFの高周波化は、肩甲骨周囲筋が伸張性収縮をすることにより生じた運動単位の動員の変化を示唆しており、この変化が肩甲骨運動に関与した可能性がある。</p><p>【結論】上肢の挙上と比較し、下制では肩甲骨の内旋の減少と後傾の増加が認められた。また下制において肩甲骨周囲筋の%MVCは減少しているにも関わらず、IMNFの高周波化が生じていることが明らかとなった。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、本学の医の倫理委員会の承認(R1347)を得て実施した。対象者には紙面および口頭にて研究の趣旨を説明し、同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-107_1-I-107_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135339392
  • NII論文ID
    130007694088
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-107_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ