振り向き動作の初動制御に関する研究

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • -体幹および下肢の筋活動に着目して-

抄録

<p>【はじめに、目的】我々の身体運動においては、積極的に不安定性をつくりだすことで初動制御を形成しているが、水平面上で形成される振り向き動作の初動制御は明らかになっていない。一般的に、水平面上での運動制御においては筋トルク優勢と考えられるが、実際の振り向き動作は荷重条件下での多関節運動かつ、バランスに拘束される。そのため、振り向き動作の初動または制動における戦略そのものが存在するのか、これは身体運動学において興味深い問題である。我々の仮説としては、振り向き側股関節屈曲トルク、非振り向き側股関節伸展トルクによる力によって偶力のモーメントを生成し、骨盤回旋運動を生み出していると仮説を立てた。</p><p>【方法】健常若年成人10名を対象とし、年齢:20.8±1.4歳、身長:170.3±6.5 cm、体重:62.2±5.4 kgw、BMI:21.5±1.7。測定課題は、右方向への180°振り向き動作。速度条件を普通速度(Normal)、最大速度(Max)の2条件と定め、1条件につき3施行の計6施行をランダムに施行した。測定項目は、所要時間、圧中心変化量、体重心変化量、各体節角度(頭頸部、胸腰椎、骨盤)、各体節onset time、各EMG onset time、EMG(左右の外腹斜筋、脊柱起立筋、大腿筋膜張筋、大殿筋、大腿二頭筋、ヒラメ筋)、床反力。三次元座標データは、5Hzのlow pass filterでフィルタリング処理をした。筋電図は、70-400Hzの帯域通過フィルターにてフィルタリング処理後、5Hzのlow pass filterに相当するようRMSを89データ毎に算出した。データの解析範囲は、圧中心移動速度がcue signal前の平均値±3SDを超えた点から、骨盤回旋速度が0(m/s)になった点とし、その経過時間を所要時間とした。三次元座標データ、床反力データ、筋電図データは、スプライン関数で101個のデータに基準化し、全被験者データを平均した。</p><p>【結果】速度条件によらず体重心と圧中心移動に一貫性は認められなかった。体節協調性は、速度条件によらず胸腰椎×骨盤間に線形関係を示した。骨盤制御に関しては、大殿筋の明らかな筋活動は認められず、股関節屈筋の大腿筋膜張筋、股関節伸筋の大腿二頭筋の明らかな筋活動を認められた。Onset timeに着目すると、速度条件によらず骨盤回旋運動より右大腿筋膜張筋と左大腿二頭筋の筋活動が先行していた。</p><p>【考察】振り向き動作の体重心、圧中心制御に一貫性を認められず、被験者毎のバランス戦略を選択していることが考えられた。胸腰椎×骨盤間に協調性を認めたのは運動自由度を減少させる戦略であり、骨盤制御の重要性が示唆された。その骨盤制御は、振り向き側股関節屈曲トルクと非振り向き側股関節伸展トルクによる力が平行かつ逆向きに作用することで偶力のモーメントを生成し、骨盤回旋運動を生み出している可能性を明らかにした。</p><p>【結論】水平面上で形成される運動制御は筋トルク優性であり、初動制御が偶力のモーメントによってなされている可能性を示した。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り、対象者へ本研究の趣旨を十分に説明し、書面にて同意を得た。なお、本研究は東北文化学園大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:文大倫第16-25号)。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-139_2-I-139_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763135349376
  • NII論文ID
    130007694208
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-139_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ