膝蓋大腿関節の変形と臨床症状の関連性について

説明

<p>【はじめに】</p><p>膝蓋大腿Patellofemoral(PF)関節の変形は,有症状の変形性膝関節症(膝OA)では脛骨大腿Tibiofemoral(TF)関節の変形に伴って60%以上で生じていると言われており,関連する報告も散見される.我々は,第6回日本運動器理学療法学術大会で高度膝屈曲制限例の特徴として,PF関節のアライメント異常があることを報告した.本研究では, PF関節の変形と臨床症状をより詳細に調べるため,レントゲン所見より骨棘の発生部位,裂隙の狭小化を評価し,可動域,筋力,痛み,動作能力との関係を調査した.</p><p>【方法】</p><p>対象は,膝OAと診断され理学療法を処方された患者のうち, レントゲン画像を撮像してから3カ月以内に評価可能であった22人26膝(女性19人,男性3人,平均年齢68.8歳)とした.除外基準は,①人工関節施行,②6ヶ月以内に何らかの観血的治療を施行,③研究の趣旨の理解困難,④年齢50歳未満81歳以上,⑤独歩あるいは杖歩行困難,⑥安静時痛があるとした.</p><p>レントゲン画像は,Nagaosaらが考案したline drawing atlasを用いて,軸写像からPF関節の骨棘と裂隙を評価した.大腿骨滑車・膝蓋骨それぞれの内外側、計4部位の骨棘の大きさを表すgradeの合計点をOsteophyte score(以下OS)とした.各対象について,膝伸展筋力,膝関節屈曲可動域・伸展可動域,疼痛,膝蓋骨可動性(gliding/tilting test)を測定し,パフォーマンステストとしてTimed up and Go testを実施した.</p><p>正規性を確認した後,裂隙grade・OSと基本属性や測定値の相関や群間の相違について,統計解析ソフトR-2.8.1を用いて分析を行った.有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>骨棘は,膝蓋骨内側(grade0,1,2,3=11,7,7,1),大腿骨滑車内側(=4,9,6,7),膝蓋骨外側(=15,11,0,0),大腿骨滑車外側(=10,11,5,0)であった.PF関節裂隙狭小化は,内側(=20,5,0,1),外側(=23,3,0,0)であった.</p><p>統計分析の結果,OSと膝屈曲可動域に強い負の相関(r=-0.76,p <0.01),伸展可動域に負の相関(r=-0.47,p <0.05)を認めた.また,gliding test, tilting testの陽性群で有意にOSが高かった(p <0.05).関節裂隙が中等度以上狭小化していたのは1例のみであったが,機能障害は比較的軽度であった.</p><p>【考察】</p><p>PF関節のOAに伴う臨床症状として,膝関節関節可動域と膝蓋骨の可動性との関連が示された.Williamsらによると,骨棘の形成は局所の不安定性が引き金となり,同部の関節運動に伴って生じると報告している.本研究では,大腿骨滑車内側に最大の骨棘が生じていることが多かったことから,膝蓋骨可動性testの結果と合わせて,膝蓋骨内側方向への不安定性が一つの要因となり,骨棘の形成や膝蓋骨外側軟部組織の硬さにつながっていると推察できる.しかし,単独部位の骨棘で十分な安定性が得られなかった例では,他部位にも骨棘が増発し,膝関節の屈曲伸展の可動域制限がより大きくなっていったと考えられる.</p><p> 今回の調査では,PF関節裂隙の狭小化を示さない症例でも骨棘の形成がみられた.Nagaosaらによると,PF関節の骨棘は,PF関節裂隙だけでなく,体格やTF関節の変性にも影響を受けると述べており,あわせて評価して解釈することが重要であると思われる. </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究は当院倫理員会の承認を受け(承認番号:20190620),ヘルシンキ宣言に基づき対象者に十分説明を行い同意を得て実施した.また,筆頭著者に開示すべき利益相反はない.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659826788224
  • NII論文ID
    130007760814
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_7
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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