水中運動療法が運動器疾患患者の自律神経機能に及ぼす即時的影響

説明

<p>【はじめに】</p><p>我々はこれまで運動器疾患を対象として水中運動療法による疼痛軽減・バランス機能改善・リラクゼーションの効果について報告してきた。今回、心拍変動解析を用いて運動器疾患患者の水中運動療法の効果を自律神経(交感神経、副交感神経)機能の観点から評価した。</p><p>【対象および方法】</p><p>対象は当院プール教室に参加している運動器疾患患者10名(男性:2名、女性:8名、平均年齢66.4歳)、内訳は腰椎疾患:6例、頸椎疾患:2例、股関節疾患:1例、骨粗鬆症:1例であった。自律神経機能評価にはクロスウェル社製の自律神経機能検査機器(きりつ名人)を用いて、水中運動療法実施前後に測定を行った。きりつ名人は安静座位(2分)-起立・立位(2分)-着席(1分)の間の自律神経活動を計測する。今回、心電図によるR-R間隔の周波数解析から低周波数成分(LF)、高周波数成分(HF)に注目した。LFは交感神経・副交感神経の両方に影響を受けるが、主に交感神経活動を反映していると言われ、HFは主に副交感神経活動を反映していると言われている。そこで本研究では水中運動前後での各個人におけるLF/HF比に着目し姿勢間での差を比較した。LF/HF比は主に交感神経機能の指標として用いられる。水中運動教室は休息を入れて、約1.5時間(ストレッチング、水中歩行、水中運動)実施した。</p><p>【結果】</p><p>能動的起立負荷によるLF/HF比の変化は、測定時の基本的な自律神経変化の原理と同様、水中運動前後において起立時に上昇、立位保持の時間に低下する変化を示した。水中運動前後での各個人におけるLF/HF比較において、水中運動前後の①安静座位-起立、②起立-立位、③立位-着座での差をみるために基準姿勢(①安静座位、②起立、③立位)を1とし、それぞれの差を検討した。その結果、①6/10(人)、②6/10(人)、③6/10(人)、水中運動後で交感神経が低値となった。また、その中でも3例共通し①~③すべての変化差で交感神経が低下する結果を認めた。今回、水中運動後の交感神経の変化をみたところ、10人の被検者の中で低値を示す割合が多かったことから、副交感神経の上昇変化の割合が多い結果示された。</p><p> </p><p>【考察】</p><p>水中運動療法は水の特性を活かした運動療法であり、転倒予防や健康増進に効果が期待できると報告されている。今回、水中運動のリラクセーション効果によって副交感神経が優位になるという我々の仮説は明確に得られなかった。LF/HF比の変化の割合をみたところ、水中運動後に交感神経の抑制が見られる傾向があったため、水中運動の効果により副交感神経の促通する可能性は考えられる。自律神経活動は環境変化、心拍数などに影響され個人による変動が大きい。その為、今回の測定結果においても個々の運動による疲労感の違い、測定環境等の影響があったのではないかと考えられる。また、症例数も少数であるため、これらの点を考慮し今後も症例数を増やし再検討していく必要性があると考えられる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>【倫理的配慮】</p><p>対象者には口頭にて本研究の趣旨を説明したのち、参加の同意を得たうえで実施した。本研究は霧島整形外科病院倫理審査委員会の承認を得て実施した。(承認番号00019、承認日平成31年2月1日)</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659826825216
  • NII論文ID
    130007760780
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_98
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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