遠心性収縮は筋を肥大させるが骨付着部(Enthesis部)には構造的変化を引き起こす
抄録
<p>【序文】腱の骨付着部はEnthesisと呼ばれ、4層構造を呈し筋活動に伴う機械的ストレスを軽減する役割を果たす。同部は成長期Overuse障害の好発部位として知られているが、運動に伴うストレスがEnthesis部の構造にどのような変化を及ぼすかについての報告は少ない。本研究の目的は、マウスのEnthesis構造の組織学的観察により、異なる運動による機械的ストレスと構造変化の関係性を明らかにすることとした。</p><p>【方法】ICR系若齢白色雄性マウス30匹を、平地走行群(0 度)、下り坂走行群(16度)、非運動群に分類、小動物用トレッドミルを使用し15m/minにて60分/日、5日/週の走行運動を8週間行なった。介入終了後、ヒラメ筋とアキレス腱付着部を採取しそれぞれ包埋後に切片を作成、一般染色を行い筋およびEnthesis全体像の構造変化を定量的に解析した。本研究は所属施設の動物実験倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号29-1)。</p><p>【結果】ヒラメ筋横断面積は非運動<平地走行<下り坂走行の順で増大傾向を示し、統計学的に有意差を認めた。 アキレス腱付着部のEnthesis構造は、同様の順で線維軟骨層における石灰化線維軟骨層の割合が拡大する傾向を示した。</p><p>【結語】本研究では非運動<平地走行<下り坂走行の順で、筋横断面積の増大及びEnthesis部における石灰化線維軟骨層の割合の拡大が認められた。下り坂走行は下肢抗重力筋に対し遠心性収縮を引き起こすため、負荷量が大きく筋肥大効果が高いとする報告があるが、本研究においても同様に筋肥大を認めた。一方、アキレス腱付着部のEnthesis構造では、遠心性収縮による機械的ストレスの増大により、他群と比較し石灰化線維軟骨層の拡大が観察された。これらの結果は、遠心性収縮の筋力トレーニングとしての有用性を再確認するとともに、Enthesis部においては構造的変化を引き起こしており、付着部症(Enthesopathy)と言われるEnthesis部の傷害の発症要因となりうる可能性が示唆された。</p>
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 38 (0), O-039-, 2020
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390283659837104512
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- NII論文ID
- 130007779572
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可