ヒト末梢神経損傷後の回復過程に類似した坐骨神経圧挫モデルの確立および神経筋接合部の組織学的評価

DOI
  • 峯岸 雄基
    埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科
  • 西元 淳司
    埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション部
  • 宇都 弥紀
    埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科
  • 村田 健児
    埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科
  • 国分 貴徳
    埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科
  • 金村 尚彦
    埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科

抄録

<p>【目的】末梢神経損傷後は旺盛な神経再生が起こるが、臨床的にヒト近位神経損傷後は運動機能障害が残存する。従来の坐骨神経圧挫モデルは、数週間以内に自然回復し、ヒトの回復過程とは異なることが問題点である。 早期に自然回復が得られるモデルでは、理学療法の介入効果の検証が困難となり得る。近年、損傷後に神経筋接合部の機能不全を惹起し、運動機能回復を阻害するマウス坐骨神経圧挫モデルが報告されている。本研究は、運動機能回復を阻害する坐骨神経圧挫モデルをラットモデルで確立し、神経筋接合部の組織学的変化を分析することを目的とした。</p><p>【方法】対象はSprague-Dawley系雄性ラット10週齢6匹とした。従来の坐骨神経圧挫モデル(SC群)、運動機能回復を阻害する坐骨神経圧挫モデル(SMC群)に振り分け、SMC群の対側後肢をSham群とした。圧挫損傷は幅2mmの止血鉗子を用いて、坐骨神経を180秒間圧挫することで行なった。SC群は1回の圧挫損傷を行い、SMC 群は再神経支配が得られる前の7日ごとに計5回の圧挫損傷を行った。圧挫後35日時点でヒラメ筋(SOL)と長趾伸筋(EDL)を採取し、免疫組織化学染色にて再神経支配の観察を行なった。運動機能評価にはSciatic Functional Index(SFI)を用いた。</p><p>【倫理的配慮】本研究は、所属機関の動物実験倫理委員会の承認を得た(承認番号30-12)。</p><p>【結果】圧挫後35日時点の再神経支配の割合は、SOLとEDLともにSMC群に比べSC群で顕著であった。SFIは各群ともに圧挫後17日より回復を示したが、圧挫後35日ではSC群で-17.6±4.9、SMC群で-42.4±8.9であった(平均±標準偏差)。</p><p>【考察】再神経支配が得られる前に圧挫損傷を繰り返し、脱神経期間を延長することで運動機能回復を阻害するラット坐骨神経圧挫モデルが確立された。今後は、同モデルに対して様々な理学療法介入の効果検証を行い、末梢神経損傷後の理学療法のエビデンス構築に貢献することが期待できる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659837344000
  • NII論文ID
    130007779419
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_f-016
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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