長崎県五島列島北部沿岸海域における栄養塩の季節的・空間的変動

書誌事項

タイトル別名
  • Seasonal and Spatial Variation of Nutrients in the Coastal Waters of the Northern Goto Islands, Japan
  • ナガサキケン ゴトウ レットウ ホクブ エンガン カイイキ ニ オケル エイヨウエン ノ キセツテキ ・ クウカンテキ ヘンドウ

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抄録

東シナ海東部に位置する五島列島は日本有数の好漁場として知られているが,近年急激に漁獲量が減少している.同時に,クロメやノコギリモクなどによって構成される豊かな藻場も減少し,深刻な磯焼けが進行している.本研究では長崎県五島列島新上五島町東部海域における栄養塩の季節・空間変動を明らかにするため,2012~2013年にかけて各季節ごとに調査(全51測定点)を実施した.夏季から秋季にかけてPO43-は全測点において検出限界以下(<0.09μM)で枯渇していた.NO3-+NO2-(夏0.1-0.9μM,秋0.3-3.2μM),S(i OH)4(夏0.7-5.3μM,秋2.1-9.3μM)と塩分との関係は海域によって異なり,比較的大きな河川が流入する湾では負の関係を示し,町東端の河川流入が見られない海域では正の関係を示した.このことから,それぞれ陸水の流入,局所的な湧昇による栄養塩供給が起こっていたと考えられる.冬季は NO3-+NO2-(1.8-4.7μM),PO43-(0.1-0.3μM),S(i OH)4(3.9-6.7μM)ともに比較的高濃度で存在し,塩分との関係は見られなかった.春季はNO3-+NO2-(0.3-2.9μM)およびPO43-(0.1-0.2μM)は塩分と正の関係,S(i OH)4(2.6-7.5μM)は塩分と負の関係が確認された.さらにS(i OH)4/PO43-比は塩分と負の関係を示したことから,PO43-は深層,S(i OH)4は陸域からの供給が重要であることが示唆された.以上から,季節・海域ごとに多様な栄養塩供給プロセスが見られたが,夏季から秋季にわたるPO43-の枯渇に代表される貧栄養状態の持続により,海藻藻場の形成に不適な環境となっていたのではないかと推察される.

収録刊行物

  • 沿岸海洋研究

    沿岸海洋研究 55 (2), 125-138, 2018

    日本海洋学会 沿岸海洋研究会

被引用文献 (1)*注記

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