播磨灘における海洋環境と植物プランクトンの長期変動解析

  • 西川 哲也
    兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター

書誌事項

タイトル別名
  • Analysis of Long-Term Phytoplankton Dynamics with Environmental Factors in Harima-Nada, Eastern Seto Inland Sea, Japan
  • ハリマナダ ニ オケル カイヨウ カンキョウ ト ショクブツ プランクトン ノ チョウキ ヘンドウ カイセキ

この論文をさがす

抄録

播磨灘に設けた19定点において,1973年4月から毎月1回,月の上旬に実施している海洋観測調査結果のうち,2008年12月まで36か年のデータセットを解析した.植物プランクトンの年平均細胞密度は,溶存態無機窒素(DIN)濃度の変動と同調し,1970年代に高く,1980年代前半に大きく低下した.構成種の大部分は珪藻であったが,珪藻の種組成は1980年代前半に大きく変化した.すなわち,それまで構成種の大部分を占めていたSkeletonema の割合が低下し,Chaetoceros をはじめ他の珪藻の占める割合が増大した.夏季を代表する有害赤潮藻Chattonella は,近年の栄養塩レベルでは1970~1980年代に見られた大規模な赤潮は形成できないと考えられた.一方,水温の上昇によってシストの発芽時期が早まった結果,北部沿岸域において小規模な出現は増大した.冬季は,1990年代半ば以降,養殖海苔に色落ち被害を引き起こすEucampia zodiacus が大量発生するようになった.本種は,1970年代から毎年播磨灘で出現が確認されてきたが,冬季水温の上昇,DIN 濃度の低下といった近年の播磨灘の海洋環境によく適応した生理生態学的特性を有し,近年になって優占するようになったと考えられた.

収録刊行物

  • 沿岸海洋研究

    沿岸海洋研究 56 (2), 73-78, 2019

    日本海洋学会 沿岸海洋研究会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ