飼育ニシローランドゴリラ集団の妊娠中の夜間の行動ーメスの性行動を中心としてー
書誌事項
- タイトル別名
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- Nocturnal behavior throughout pregnancy in a captive group of western lowland gorilla (<i>Gorilla gorilla gorilla</i>) with a central focuson female sexual behavior
説明
<p>繁殖を目的としない性行動はヒトをはじめとした霊長類で広く報告されてきた。なかでも妊娠中の交尾は一般的には子殺しを防ぐためと考えられてきたが,野生ニシローランドゴリラ(Gorilla gorilla gorilla)の単雄複雌群においては,優位なメスが劣位なメスによる交尾を妨げるためであることが示唆されている(Stoinski et al., 2009)。そこで本研究ではメスが1頭で雌間競合のないニシローランドゴリラ群を対象にすることで妊娠中の交尾の究極要因を明らかにすることを目的のひとつとした。また,性行動が見られた夜間における妊娠の経過に伴う活動変化も把握することで希少種であるニシローランドゴリラの飼育下繁殖に貢献する知見を得ることをもうひとつの目的とした。対象は京都市動物園で飼育されているニシローランドゴリラ3頭(シルバーバック1頭,オトナメス1頭,ワカモノオス1頭)である。夜間(16:30˜翌9:00)はビデオ記録をもとに行動観察を行い,3分間隔の瞬間サンプリングで記録した。記録した行動は先行研究(Stoinski et al., 2009)に倣い,メスからシルバーバックに対する誘いかけ行動(目を合わせたり手で触れるなど)と交尾,ならびにその他の活動(採食,移動,休息,社会行動など)とし,その生起頻度を分析対象とした。妊娠前には,813分間の観察で3回交尾があったが,妊娠中の性行動は無かった。競合相手がいない環境で妊娠中の性行動が観察されなかったため,ニシローランドゴリラの妊娠中の性行動は雌間の性競合の結果であると考えられる。また,対象の3個体のいずれの活動においても,メスの妊娠経過に伴う有意な頻度の変化は見られなかった。このため,妊娠経過が行動に及ぼす影響は無かったと考えられる。ただし,いずれの結果についても,個体数を増やすなどさらなる調査が必要である。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 35 (0), 55-56, 2019-07-01
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390283659861328768
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- NII論文ID
- 130007813488
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可