野生ニホンザルにおいて瞬き頻度は毛づくろいへの集中力の指標になるか

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タイトル別名
  • Eyeblinking in wild Japanese macaques: an indication of concentration on grooming

抄録

<p>多くの霊長類で観察される社会的毛づくろいは,互恵的利他行動であると考えられ,毛づくろいを行う相手や授受される毛づくろい時間のバランスといった観点から数多く研究がなされてきた。しかし,これらの指標を用いた研究では,毛づくろい中の集中力が一律であることを前提にしており,そうした毛づくろいの質的な側面において互恵性が成り立つのかという観点から議論することができなかった。そこで本研究では,毛づくろい中の集中力を評価するために,ヒト(Homo sapinens)において集中力の指標になると示唆されている瞬きに着目した。ヒトでは無意識的に視覚情報の中に出来事のまとまりを見出し,その切れ目で瞬きを行うことで対象への注意を一旦解除し,情報処理を行っている可能性が示唆されている。また,集中して行う作業中には瞬きが抑制されることが知られており,視覚情報を要する作業中の瞬きの頻度が集中力の指標になるのではないかといわれている。このような瞬きに関する特徴がヒト以外の霊長類でも当てはまり,瞬きの頻度が集中力の指標になるのか検証するために,宮城県金華山島のニホンザル(Macaca fuscata)A群のオトナメス10個体を対象に,2017年9~12月と2018年7~9月の間,毛づくろい中と休息中の瞬きをビデオカメラを用いて記録した。シラミの卵を探索除去するという視覚情報の精査を要する作業である毛づくろいの最中と休息中の瞬きの頻度を比較すると,毛づくろい中は瞬きが抑制されていた。また,毛づくろい中について瞬きが起こったタイミングを調べると,除去した卵を口に入れる瞬間のような視覚情報の要らない出来事の切れ目と考えられる瞬間の0.9秒前~0.5秒後に瞬きが起こる割合が高く,卵を探索している最中は瞬きが抑制されていることが分かった。よってニホンザルの瞬きにもヒトと同様の特徴があることが示され,出来事の切れ目以外で起こる瞬きの頻度が集中力の指標になる可能性が示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659861334016
  • NII論文ID
    130007813539
  • DOI
    10.14907/primate.35.0_31_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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