子どもをつれたチンパンジーの垂直木登り運動について
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- 中野 良彦
- 大阪大・人間科学
書誌事項
- タイトル別名
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- The vertical climbing of chimpanzees with infants
説明
<p>チンパンジーの行う垂直木登り運動の年齢的変化を記録する目的で,ビデオ撮影による継続的な運動観察を行った。撮影記録は年2回,12年間継続したが,その観察期間中に複数のメス個体が出産し,子どもをつれた状態で垂直木登り運動を行った。本研究では,そのメス個体の木登り時の運動や子どもの姿勢について報告する。垂直木登りを行わせるポールは直径15cmの木製で,各個体は飼育担当者の指示により,定期的にこのポールでの木登り運動のトレーニングが行われていた。観察時にはリード等による牽引はなく,各個体の自発的な運動が行われた。対象となったチンパンジーはTsubaki(母)とNatsuki(仔),Mizuki(母)とIroha(仔)の2組で,母子が一緒の木登りはNatsuki が5ヶ月齢,10ヶ月齢,1歳5ヶ月齢,1歳10ヶ月齢の4回,Irohaが3ヶ月齢,8ヶ月齢,1歳4ヶ月齢の3回,それぞれ観察された。いずれの観察においても,母個体が上肢で子どもを支えることはなく,子どもが母個体をしっかりと把持していた。どちらの母子ペアも出産後最初の観察では子どもは母個体の背側腰部に上肢で母個体の体毛をしっかりとつかみ,下肢は腰部を挟むようにしていたが姿勢を保持するには不十分であった。Natsuki は10ヶ月齢を過ぎると,体毛を指でつかむのではなく,母個体の胴体部をしっかりと手掌部でつかむようにして密着していた。最後に観察された1歳10ヶ月齢では,胴のやや上部や肩につかまっている試行も見られたが,腹側につかまった試行は一度も観察されなかった。それに対してIroha は8ヶ月齢の観察時に背側と腹側の両方の試行が見られ,1歳4ヶ月齢では,すべての試行で腹側に位置していた。こうした姿勢の変化は,主要因として一般的に子どもの運動や神経系の発達と関連していると考えられるが,個体差については他の要因が関連している可能性もある。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 35 (0), 50-50, 2019-07-01
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390283659861412608
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- NII論文ID
- 130007813510
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可