性特異的遺伝標識による房総半島の外来種に関する見直し

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  • Review of exotic species on Bousou Peninsula by means of sex-specific genetic markers

抄録

<p>(目的)房総半島では南部に定着した外来のアカゲザルと在来のニホンザルが交雑することが分かっている。近年になり新たにカニクイザルが交雑に関与する可能性が疑われるようになった。本研究では,性特異的に遺伝する種判別標識を利用し,関与する外来種を見直すことを目的とした。(方法)既得の血液と新たに収集した糞DNAを試料に用いた。ミトコンドリア遺伝子(mtDNA)の非コード領域配列につきアカゲザル,カニクイザルで報告のある地域変異を参照し房総のニホンザルと比較した。また,限性遺伝するY染色体遺伝子につき,マイクロサテライトDNAの3多型座位(DYS472,DYS569,DYS645)で識別できる染色体タイプからニホンザル由来でもアカゲザル由来でもないタイプを特定した。このタイプを示すオスについてTSPY遺伝子の部分配列を読み,既知配列と比較し種判別を試みた。(結果と考察)母性遺伝するmtDNAの場合,移住の可能性があるオス以外ではニホンザル分布域とアカゲザル野生化地域に対応するタイプが2分された。メスの移住は起きにくいことから,現存個体群に第2の外来種の痕跡は認められないと判断した。一方,限性遺伝するY染色体遺伝子では,繁殖を介したオス遺伝子の伝達があるため,ニホンザル野生群に外来種の影響が認められる。勝浦市のニホンザル群には南房総のアカゲザルと異なるY染色体タイプ(仮称Xタイプ)をもつ交雑オスが検出される。このタイプの分布は限られ,勝浦以外の地域では今のところ確認できていない。XタイプのTSPY遺伝子配列分析ではカニクイザル起源の確証は得られず,南房総のアカゲザルと同じ配列が検出された。しかし,カニクイザルがアカゲザルと自然交雑するインドシナ半島のカニクイザル由来の可能性も残るため,アカゲザル由来と断定することはできない。勝浦市でカニクイザルを放し飼いし閉園した公園の存在に照らし,今回の分析結果を考察する。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659861413888
  • NII論文ID
    130007813526
  • DOI
    10.14907/primate.35.0_38_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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