マカカ属の寛容性における遺伝的基盤の解析

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タイトル別名
  • Analysis of genetic basis for tolerant trait in macaques

抄録

<p>マカカ属の社会の優劣の表れ方(寛容性の程度)には種間差があり,最も優劣の厳しいGrade1から最も寛容的なGrade4まで4つに分けられている。本研究では,寛容性に影響を与えている遺伝子の候補として,ドーパミンなどを分解する酵素であるカテコール-O-メチルトランスフェラーゼをコードするCOMT遺伝子(COMT)に着目した。COMTのexon4内には,ヒトにおいて非同義置換(Val/Met)を起こす一塩基多型(SNP)(G/A; rs4680)が確認されており,Aアリル(メチオニン)を持つ個体は酵素活性が低く,社会的ストレスに弱くなると示唆されている。本研究では,マカカ属10種のCOMTの解析を行い,COMTの種間差と寛容性との関連について調査した。遺伝解析には,クロザル,ムーアモンキー,トンケアンモンキー,バーバリーマカク,シシオザル,ボンネットモンキー,ベニガオザル,ブタオザル,カニクイザル,アカゲザル,計93個体のDNAを用いた。これらのCOMTの塩基配列の一部を決定し,rs4680のアリル頻度と種群および寛容性との関連について調査した。Gradeによりアリル頻度は有意に異なっており,Grade1の種はAアリル,Grade4の種はGアリルで固定しているのに対し,Grade2および3の種はAとG両方のアリルがみられることがわかった。ヒトでAアリルをもつ個体は社会的ストレスに弱いと示唆されていることから,Grade1の種は社会的ストレスに耐えられないことが寛容性の低さにつながっているのかもしれない。また,種群によりアリル頻度が異なっており,Gradeも種群により異なることが報告されていることから,COMTと寛容性の関連は偶発的である可能性も否定できない。しかし,ニホンザルの種内でも寛容性の程度にCOMTが影響を与えているとの報告も考慮すると,この遺伝子が寛容性に影響している遺伝子の1つである可能性が高いと考えられる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659861482496
  • NII論文ID
    130007813460
  • DOI
    10.14907/primate.35.0_46_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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