屋久島山頂部のニホンザルの食性と生態

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タイトル別名
  • Diet and ecology of Japanese macaques using the sumit area of Yakushima Island

抄録

<p>生物の環境適応は生態学の大きなテーマである。ニホンザル(Macaca fuscata,以下サルと略)は日本に広く分布して,適応能力の高い種であるが,垂直方向の環境勾配に着目して以サルの生態を調べる研究は少ない。これは条件を満たす調査地が少ないからで,標高0mから1936mまですべての標高帯でサルが生息している屋久島はまれである。屋久島の山頂部は,ヤクズギ林帯の境界である標高1700mを超えると,ヤダケ属の1種であるヤクシマヤダケ(Pseudosasa owatarii)が一帯を占優するササ原となる。これまで,低標高(海岸域),中標高(上部域)でサルの長期調査がおこなわれ詳細な生態が調べられているが,山頂部の調査はほぼなく,ササ原を利用するサルの生態はほとんど不明であった。まず,山頂部のサルがどのような生態か調べる必要がある。本研究は,糞分析を用いて山頂部のサルの食性と生態を明らかにすることを目的とする。調査期間は2015年7月から2016年11月までである。20×20mの植生プロットをササ原(1700-1936m)と森林(1400-1700m)でそれぞれ5つと4つ作成し,ササ原ではヤクシマヤダケの被度を調べ,森林では胸高直径5cm以上の樹木を対象に毎木調査をおこなった。また,森林とササ原の両方の登山道上でルートセンサスをおこなった。その際に発見した糞を分析に用いた。糞は洗ったのちに,内容物を繊維と種子に分け,乾燥重量を比較し,種子の種同定をおこなった。ササ原はほぼヤクシマヤダケに覆われているという結果になった。また,糞から検出された種子は,ほぼすべて森林内のプロットに存在した樹木の由来のものであった。ササ原で糞が見つかったのは4月から10月までであった。そのうち種子は8月から10月で検出された。また,森林内の糞も同様に8月から10月で種子が検出された。これらのことから,サルは冬以外の季節でササ原を利用し,少なくとも秋の期間はササ原と森林を行き来していることが示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659861573760
  • NII論文ID
    130007813520
  • DOI
    10.14907/primate.35.0_59_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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