〈一般演題抄録〉Malignant transformation が疑われたPigmented hepatocellular adenoma の1 例

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  • <一般演題抄録>Malignant transformation が疑われたPigmented hepatocellular adenoma の1 例

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抄録

 脂肪肝の背景を持った患者に発症した悪性転換が疑われた⾊素性肝細胞腺腫を経験したので報告する. <br>  50 歳男性. 家族歴に特記事項なし. 既往歴は 2 型糖尿病, 両側⿐茸切除術, 慢性副⿐腔炎. ステロイド薬使⽤歴なし. 健診で平成X 年11 ⽉に肝腫瘍を指摘され当院消化器内科受診. 諸検査で悪性を強く疑う所⾒なく経過観察となっていたが, 腫瘍の若⼲の増⼤傾向があったため当科紹介. <br>  ⾎液検査では軽度肝機能障害と HbA1c 6.9%を認め, 肝炎ウイルスマーカーや AFP やPIVKAⅡなどの腫瘍マーカーの上昇なし. 超⾳波検査では脂肪肝を背景に, S2 に約 25mm ⼤の low echoic で境界明瞭な結節を認め, 中⼼部に不整形な high echoic lesion が混在. 腹部MRI では, T1 強調画像で⾼信号, T2 強調画像で低信号, 造影ダイナミックでは, 病変が早期から均⼀に濃染され後期相まで持続. <br>  以上の結果から局性結節性過形成や肝細胞腺腫などの良性腫瘍が考えられたが, 悪性の可能性を否定できず, 同年 11 ⽉に腹腔鏡下肝外側区域切除術を施⾏. <br>  切除標本は 22×23mm の充実性で⿊⾊境界明瞭な腫瘍. 病理組織学的には, 腫瘍は圧排性であるが被膜形成なく、背景肝よりやや⼤型の肝細胞が索状に増⽣. 腫瘍内に筋性⾎管を認め、成熟した胆管や⾨脈域はなく, 肝細胞腺腫に⽭盾しない所 ⾒. 腫瘍内にリポフスチンと思われる⾊素沈着を認め, ⿊⾊を呈する原因と考えられた. また, 軽度炎症性細胞浸潤を認め, 免疫染⾊で, SAA, CRP, GS が腫瘍部⼀致して陽性. β -catenin も⼀部陽性で Pigmented hepatocellular adenoma, inflammatory type, β-catenin type の診断. さらに, ⼀部で腫瘍細胞が nodular に増⽣し, 細胞の⼤⼩不同, 核の濃染を認めた. ごく⼀部の鍍銀線維の減少や偽腺管様構造も認められ悪性転換の可能性が⽰唆された. 術後 経過良好で術後6 ⽇⽬で退院. 術後 6 か⽉間の観察で再発や転移は認めていない. <br>  肝細胞腺腫は, 本邦では⽐較的稀な良性腫瘍で, 海外では 3-4/100,000 ⼈の罹患率. ステロイドや避妊薬と関連がいわれている. Bioulac らは肝細胞腺腫を臨床的・病理学的特徴から 4 つに分類しているが, それぞれの頻度や悪性転換との関連性の報告は少なく, ⾊素性と⾮⾊素性との区別も不明確である. ⾊素沈着やβ -catenin 活性化などが悪性転換のリスクである可能性が報告されており, 今後, 症例の蓄積により悪性化のリスク分類がなされることが期待される.

収録刊行物

  • 弘前医学

    弘前医学 70 (2-4), 180-180, 2020

    弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会

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