外邦図を用いたジオリファレンス

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  • Georeferencing Gaihōzu

抄録

<p>外邦図とは、明治期から第二次世界大戦終戦まで、旧日本軍参謀本部・陸地測量部などが作成した、日本領土以外の地域の地図である。外邦図の多くは軍事用に制作されたため、実状は秘密にされてきた。全体として何種類、何枚作られてきたかというようなデータは残っていない。また日本の敗戦直後、連合軍が進駐してくる前に多くの外邦図が焼却された(塚田・富澤2005)。戦後70年以上が経過し、現在の景観と比較すれば、環境や土地利用、都市域など様々な変化を長期的な視点で読み取ることができると考えられる。特に、アジア地域は経済発展や自然災害の影響を受け劇的に変化した。今後の地理学的な研究を行う上でも、外邦図は比較参照に重要な資料となることが期待される。駒澤大学には多田文男教授(在職期間1966~1977)より寄贈された外邦図を中心としたコレクションが所蔵されている。</p><p></p><p> 前述の通り外邦図は、過去の景観をとどめる資料として利用することも十分可能であると考えられるが、比較するための基盤が十分ではない。各機関から目録やデジタルアーカイブの公開が進んではいるものの、地理座標を与えGIS上での活用可能な情報に整備(以下、ジオリファレンス)することが必要であると考えた。そこで、本発表の目的として、駒澤大学に所蔵されている外邦図を対象とし、画像取得からジオリファレンスまで行い、問題点を洗い出した。</p><p></p><p> 駒澤大学に所蔵されている「“KEBAJORAN”五万分の一図 ジャワ島四十五号」をスキャンし画像を取得した。この地図は、オランダが作成、経線の基準がバタビア(現在のジャカルタ)を0度として作成された地図をもとに陸地測量部が複製した。そのため、図郭の外側の凡例は日本語による翻訳がされているものの、表記は原図のままになっている。取得した画像を図郭でトリミングし、ArcGIS10.6.1(ESRI)のベースマップ(WGS84)に対してジオリファレンスを行った。ジオリファレンスは二種類の方法で行った。(1)図郭線四隅の緯度経度を、地図から読み取り、度分秒を手計算により入力、(2)目標物を対象として目視での参照である。このうち、(1)は、小林ほか(2009)が解説した資料の「バタヴィアトグリニッジトノ経度ノ差ハ百六度四十八分二十七秒七九トス」をもとに、一括変換が可能かを検証するためである。(2)は鉄道路線、道路といった人工物を基準として手動でジオリファレンスをおこなったものであり、測地系の違いにもある程度対応できるのではないかと期待しておこなった。</p><p></p><p>(1)ベースマップと比較すると、街路等で経度約0.00207°、緯度約0.00142°の誤差が生じた。</p><p></p><p>(2)街路等は比較的正確に一致した。しかし縦横比は南北に0.00057°広がり、東西に0.0014°狭まった。図郭線は以下のような誤差が生じた。</p><p></p><p> ジオリファレンスによって街路等が比較可能な程度に一致したことから、小林(2006)で指摘したように外邦図が歴史的な景観の比較に活用できることが示唆された。しかし、今回の発表で用いたジオリファレンスの方法では誤差や歪みなど、多くの問題が指摘できる。それぞれの歪みの原因としては、原図の座標系がWGS84でないことが考えられる。今後GIS等でバタビア基準外邦図を使用した研究のためには、統一した座標の変換ルールや計算式が必要であるといえる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659865779840
  • NII論文ID
    130007822034
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_152
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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