観光産業の拡大による宿泊施設の過剰供給

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  • Oversupply of accommodation due to the growth of the tourism industry

抄録

<p>本研究では,金沢市におけるホテルの急激な増加の背景ならびにその影響について報告する.金沢市は,2015年3月の北陸新幹線開通後の2016年には,宿泊客数が308万4854人と300万人を突破した.その後も,2018年時点で330万5090人と宿泊客数を伸ばしている.宿泊客数の増加に伴い,宿泊施設の需要が拡大している.金沢市内の宿泊室数は,旅館、ホテル,簡易宿所を合わせ2014年の8,720室から2019年には14,522室に増加した.特にホテルが,7,904室(2014年)から10,974室(2019年)と大幅に室数を伸ばした.</p><p> ホテルの室数が大幅に増加した理由は3点ある.一つめは,金融機関の超低金利に伴う収益の悪化やデジタル化による支店の統廃合や移転により,ホテルに適した用地が市場に放出されたことによる.金沢市の上堤町から南町の金融機関が集積していた百万石通りでは,ホテルの開業が続いている(図1).二つめは,中心市街地の衰退である.片町や竪町は,老朽化したビルやテナントが撤退したビルが増加している.これらがホテルの用地として買収され,ホテルの建設が進んでいる.三つめは,金沢市による誘致である.金沢市は,金沢駅西口の市有地を「インターナショナルブランドホテル事業」としてプロポーザルを行い,アメリカ本社の大手ホテル会社の事業を採択した.</p><p> 本研究では,ホテルの急激な増加による金沢市の都市の変容について,ツーリズムジェントリフィケーションの観点で検証した.ツーリズムジェントリフィケーションとは,観光開発によって,不動産投機による不動産価格の高騰や富裕層の来住が生じる現象である.また,多様な建造物や生活様式のあった地区が均質化されていく現象でもある(Gotham 2005). 金沢市では,ホテルの開業が進んでいる地域で,路線価の上昇が確認された.また,宿泊客数の増加を上回る宿泊施設の増加により,弊害が生じている.観光需要の拡大に伴う都市の変容と課題について報告を行う.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659865783680
  • NII論文ID
    130007822069
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_167
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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