災害伝承を教訓とするための発展的アクティブラーニング防災教育教材の開発に関する研究
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- 後藤 健介
- 大阪教育大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Development of Advanced Active Learning Teaching Materials for Disaster Prevention Education to Learn Disaster Lore as a Lesson
抄録
<p>1. はじめに</p><p>現在の防災教育は災害に遭遇した際の行動についてのみ教えることが多く、災害の基礎知識について学習できる環境は大変少ない。被災時の緊迫した状況下では正確な状況判断の基準となる災害の基礎知識が重要となる。本研究では、小学校児童が自分たちが住んでいる地域の自然災害に関する伝承記録を題材にし、地域の特徴や災害の歴史を学びつつ、それに関する災害の基礎知識を学習できる、伝承記録を題材にした学校と地域の連携・協働の強化に繋がる教材で、かつ児童自ら伝承記録を登録し、それを公開することで他の学校の教材にもなり得るような発展的アクティブラーニング型e-learning教材の開発を目指した。</p><p></p><p>2. 研究方法</p><p> 本研究では、まず防災教育を行うための教員の防災に関する知識の現状を把握する。そのために、国内の小学校における教員の自然災害に対する基礎知識をどれだけ有しているのかを明らかにし、その地域特性を把握することで、真に必要な防災教育教材の開発に繋げる。この調査は、Webアンケートによって実施した。</p><p>次に、本研究で可能な限りの地域に埋もれた伝承記録の掘り起こしを行い、それらの情報を電子化および電子地図化し、後世に残せる防災教材とする。</p><p>最終的には、インターネットを通した、学校で調べた地域の伝承記録を題材とするアクティブラーニング教材の開発を行った。このことで、地域の特徴・歴史を確認できる地域に根差した防災教育教材となり、児童自ら教材の拡充が可能なアクティブラーニング教材開発となる。</p><p></p><p>3. 結果</p><p> 今回の研究で、全国の過去に災害が発生した地域において、災害伝承記録がどのように残され、どのように伝承されているのか、その現状を把握することができた。例えば、同じ地域内において、過去何度か水害被害に遭った地域では、それぞれの水害時における水位を示す供養塔(寺に建立)、および石柱(小学校に建立)が建立されており、地域住民は記憶に新しく、より地域に広く浸透した石柱の水位についての記憶・知識を有している人々が多かったが、石柱が示す水位は過去の水害記録の中では低い記録であり、そのため、最近発生した水害時において、まだ大丈夫だろう、という気の緩みにつながってしまい、避難が遅れたケースもあった。</p><p> 災害伝承記録の残し方、地域の子どもたちにどのように教訓として残していくのか、より検討する必要があることが分かる。本研究の教材は、教訓を口承ではなく、教材として残し、それを教員を通して学校で学習できるような機会をつくることが可能となり、前述のような問題についても解決できることが期待される。</p>
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2020s (0), 316-, 2020
公益社団法人 日本地理学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390283659865882752
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- NII論文ID
- 130007822234
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可